吉見 それから、これらの周旋業者の用いる誘いの言葉は、多額の 金銭と家族の負債を返済する好機、それに楽な仕事と新天地 における新生活という将来性である。これは甘言に当たるの で、これも誘拐罪を構成します。
で、このような偽りの説明を信じて多くの女性が海外勤務に 応募し、200~300円の前渡し金を受け取った、と言う風にあ りますので、人身売買でもあるわけです。
荻上 じゃあちょっと今の質問に変えますと、当時インフレだった ということを考慮しないのか、というのが一点と、それから その今読みあげていただいた方々のそもそも来た理由と言う ものが、甘言、騙されて来ている方々なので、それはどうな んだ、っていう話で、
秦 あれは騙したんですよ。
萩上 誰が騙したんでしょうか?
吉見 これ日本の周旋業者って書いてありますよ。
秦 え?
吉見 日本の周旋業者が朝鮮にやってきて・・・
秦 日本人のですか?
吉見 いやいや、日本のだから日本人でしょう。
吉見 それはですね・・・
だから、騙せませんよ。
吉見 元締めが、日本の業者で、手足としてですね、地元の業者を 使うということはよくあることですよね。それから、この周 旋業者というのは軍に選定された人物であって、軍から色々 便宜を計ってもらって、まあ誘拐とか人身売買やってるわけ ですよね。しかしこれは犯罪なわけでしょ。
それで、連れてった元はどこに入れるかっていうと、軍の施 設である慰安所に入れるわけですよね。そうするとそこで軍 の責任は発生しないんですか?どういう風にお考えですか?
吉見 いやいや・
それでどうしてそういう騙しを摘発しなかったんですか?
萩上 う~ん。あのちょっと先ほどの話に戻ってですね、気になっ たのが、
秦 例えばね、こういうのがあります。
秦 いや、ですから回想記で、一代記です。元慰安婦のね。なる ほど、これは非常に良くできている、読ませる本なんですけ どね。で、彼女は色んなところを転々としたんですけれど も、最後ビルマに行ってるんわけ。
萩上 はい。
秦 それで、5万円貯金が出来たと。2年余りでね。はい、そのう ち5000円を軍用郵便で、下関郵便局へ送ったわけですね。
萩上 それは何年頃の話ですか?
秦 昭和18年。戦争中ですね。ですからね。これなんかもね、非 常に楽しかったと、いうのが基調なんですよ。だからね、中 には悲惨な人もいたかもしれない。しかしね、兵隊たちに良 いサービスをしてもらうために、軍もそれなりに気を使うわ けです。それで、業者との間では大体、慰安婦側に立って 有利になるようにしてやっている。だからね、さっきの米軍 の尋問調書でね、あれでもやっぱり性奴隷だと仰るんです か?
吉見 そうですね。
50:20
秦 ほう。だって四つの自由のうち、三つの自由は完全にあった わけですよ?
吉見 いやいや。
秦 もうひとつ、居住の自由っていうのはね、これはね、居住の 自由っていうのは、看護婦さんもないですよ、居住の自由 は。だってね、まさか戦地でね、バスで通勤なんていうね、 アパートも借りてなんてそんなことはあり得ないでしょう。
吉見 それはあの看護婦さんと、それから慰安婦の女性達がさせら れている事柄は全く違うじゃないですか。看護をするという のはですね、本人にとってはそれは名誉なことですけれど も、軍人たちの性の相手を毎日させられるということと、全 く性格が違うんじゃないですか。
秦 それを論じたってしょうがないでしょう。職業のひとつとし て割り切ってるんだから、その代わりね。
吉見 いや、職業だと仰いますけれども・・・
秦 嫌な仕事かもしれないけどね・・・
吉見 誘拐で連れていかれた・・・
秦 軍司令官よりも高い給料もらってんだからね、みんななりた がるんですよ。
吉見 いや、それは幻想なわけでしょ。
秦 &nb