河野談話を守る会のブログ2

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質の低い右派発言、論文あれこれ

 
最近の『will』や『正論』『サピオ』・・・などを読んでいると、右派論壇の質の低下に驚かされる。

慰安婦」についても、彼らはあれこれ書いているが、慰安婦関係の一次史料などほとんど掲載していない。彼らが読む歴史学者慰安婦に関する著作物は、多分秦郁彦慰安婦と戦場の性』ぐらいだろうか?いやそれさえもちゃんと読んでいないか?または頭の中に残らなかったようだ。元慰安婦達の証言について、「捏造である」と書く者はいるが、実際に元慰安婦のロラやハルモニの証言を聞いたり、読んだ者は皆無に近いように思われる。おそらくは、西岡力『よく分かる慰安婦問題』あたりを読んで、後はネットを検索してwikipedia辺りで適当にイメージを造るのではないかと思われる?

『正論』2013年8号の「歴史戦争への我が一撃」という西村真悟の文章もかなりでたらめを書いている。例えば慰安婦という言葉自体が比較的新しいのである。この言葉ができたのは・・・・昭和50年代半ばではなかろうか?」(P92)などと書いて無知を披露している。こういう調べればわかる事を調べないで書くのが彼らの流行なのだろう。慰安婦という言葉は戦時中からあったし、公文に残っているのだが、そういう事さえ調べようともしないらしい。

「従軍とは軍属の事であり・・・・料金を個々の兵隊からもらう軍属などいない」(P92)とも書いている。しかし軍によって選定された業者は、「軍属」として扱われた。また料金ももらっていたのは慰安婦ではなく、業者であった。慰安婦はその業者から、自分の取り分をもらえる事もあったが、まったくもらえない事も多かった。それはその時代の遊郭などもそうであったので、研究者の間では一種の常識だが、戦後まったく自分が経験していない事なのに、ろくに調べもしないで書く連中が増えた訳だ。

「強制連行はなかった、と平成4,5年ごろ決着がついている。」(P92)
デマというのはこういうのを言うのであり、「平成4,5年ごろ決着」というのは要するに、「吉田清治の証言は信用できない」という決着がついただけである。一証言者の証言が信用できない事が分かったからというだけの事を拡大していくという図式である。

「警察の幹部も朝鮮人であった事実」(P92)
そんな事実はない。当時警察組織の中で朝鮮人は出世できなかった。(例外的に一人ぐらいは署長くらいにはなれたかも知れないが)

総督府において日本人が高級官僚を独占し、警察署長や道警務部長には朝鮮人を登用しないという不文律があった。」のである小磯国昭『葛山鴻爪』p757
(『日本の植民地支配 肯定賛美論を検証する』p16 岩波)

また敗戦直後に朝鮮半島からの引き揚げを体験した 岩下彪『少年の日の敗戦日記ー朝鮮半島からの帰還ー』 のp122で 「総督府地方自治体の長には朝鮮人をあてるようにした。ただし郡庁には日本人の内務主任を置き、警察署や学校の長には日本人をあててにらみを利かすようにした・・・・」 と書いている。
こうした著作をまったく無視しているのが彼らである。



慰安婦達が名乗り出た結果、1992年頃から統計処理が可能となり、「慰安婦」が実証歴史学の研究対象となった。古い文献、公文、日記などがぞくぞくと掘り起され、慰安婦も様々な境遇がある事が知られるようになったが、こうした専門家の研究をまったく無視して、ろくに一次史料も使わない西岡力や恣意的に資料を使う中山成彬などの意見のみを引用するわけだから、当然おかしな意見になってしまう。

「また吉田がこの本で挺身隊の名で慰安婦狩りをしたように書いたので挺身隊イコール慰安婦というデマも信じられた・・・」(P93)
これがデマというものだ。
彼らは自分達は本当の歴史を知っているが、吉見などの歴史学者(秦以外)や河野洋平や、市民団体やアムネスティなどのNGOやアメリカや国連やカナダやオランダ・・・などは、皆嘘に騙された連中なのだと思っているらしい。それで彼らはアメリカに真実を言い続けよ」(P94)なんて書くが、実際には嘘ばっかり信じているのは自分達である。アメリカはアメリカでそれなりに高い知性を持った人間が、複数の資料や証言から「慰安婦は性奴隷制度である」という結論を出したのである。

片山さつきは、『will』2012-11月号、P105で「・・・・とにかく本を読まないとね。それでは見識や歴史観を求めるのはかなり難しいのでは。・・」とか述べているのだが、ネットのデマを鵜呑みにするお前が言うか?というしかない。(サピオ下資料)こういう高慢な想いが彼らの特徴と言える。

ベトナムで)韓国軍が制圧した地区で殺害されなかった女性はほとんど慰安婦にされたと言われる」(P103)
・・・・・で誰がそれを言ってるんだ?
ちゃんと出典ぐらいつけろ!

こういう論説を垂れ流すことが、何か日本のためにプラスになるのだろうか?
公害に似ていて、ほとんど害ばかり有る。



 

片山サツキのとんでもない世界
SAPIO2012年8月22・29日号
 
 
最近、ネット右翼ネトウヨ)がネット上で盛り上がったネタを真に受けて行動する政治家も出てきている。その代表が片山さつき議員だ。一連の経緯を振り返ってみよう。
 自民党参議院議員片山さつきは、ネットのデマに釣られがちだ。古くは鳩山由紀夫首相(当時)のニセモノがツイッターを始めた時、「フォローして下さい」と呼び掛けた件がある。今年の3月にも、「NHKの音楽番組『MJ』における韓国人グループ・歌手の占有率36%は多過ぎる」と参議院総務委員会で批判したが、実際は11%だったことが明らかになった。
 河本準一の母親の生活保護受給問題では、生活保護制度の改正を訴えるために、当初は匿名で報道されていた河本の実名を挙げ、そのことで多くの芸能人や文化人から批判された。
 また、あるテレビ番組でお笑い芸人・千原せいじが「片山氏の夫がかつて会社を倒産させた」という趣旨のことを発言したところ、2ちゃんねるで「千原せいじ片山さつきの夫の会社を潰す』と恫喝」というネタになった。
 それをそのまま信じ、その後出演した番組で涙ながらに「千原せいじさんに恫喝された」と語った。問題の番組を見たわけではなく、「新幹線の中で人から聞かされた」と語っていた。
 このように何かとネット上の騒動に首を突っ込みたがり、批判も受けるが、「愛国者」からは大人気で、ついには今年7月1日、「片山さつき議員を応援するデモ」まで行なわれるに至った。本人もデモの現場に現われ、「皆さんは本当に素晴らしい愛国者です」と呼び掛け、喝采を浴びた。(文中敬称略)