河野談話を守る会のブログ2

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【強姦から見た大東亜戦争史】 いくら、朝日を攻撃しても、この事実は揺るがないだろうに・・・・・


歴史修正主義者たちが、「反日」とか「サヨク」とかレッテルをはるこの手の記事だが、読売もこう書き、従軍体験を書いた作家もこう書き残している。

いくら朝日を攻撃してみても、その事実は揺るがないだろうに・・・・。





      戦争にあっては,道徳も倫理も人間とやらもそんな理性は遠くに消滅し,
       既に自分らも又,虫けらにも劣る動物になっていた


なぜ,オヤジさんが話さんのかわからんのですが,中国を旅してハッとさせられました。一緒に旅した元兵士の人たちは,むかし駐屯していたところに近づくと,みな一様に黙り込んでしまい。じっとり脂汗を浮かべる人もいるんです。ある人が,耳うちするように,掠奪や放火,殺人,ベトナム戦争のソンミ事件のようなことはしょっちゅうやったと言いました。オヤジがそういうことをやったとは思いたくありませんが,ぼくも,人間の狂気,戦争の狂気を見据えて……。

黒煙をあげて燃えさかる集落には鶏や猫の影があるだけである。黙々と兵は進む。焔(ほのお)の中を黙々と進む。幾つかの村を通りすぎる。生々しい戦場の跡が無残な姿を展開してゆく。先発の兵団は,一物も残さない徹底した進撃ぶりである。ちょっと飛びはなれたところに完全な集落を発見する。我々に対してチェコ機銃を向けてきた。だが,山砲,重機が見事な射撃を加えると敵はひとたまりもなかった。一兵も損ずることもなく,我々はこの村に入った。

「軍の命令により,この集落を焼滅する」という命令が出た。我々が引き揚げた後,敵側に利用せしめないための措置であった。

さあ喜んだのは兵隊である。大っぴらに焼き打ちに出来るとは……。火を見て喜ぶのは子供の本能である。兵隊はたわいのない子供といってよかった。藁に火をつけると次から次へと投げ込んでゆく。家財道具から燃えはじめ,屋根にうつると黒煙に赤い焔が血のような彩りをつくる。去りもやらず家に閉じこもる住民があった。そんなものに兵隊は頓着しない。人のはいったままの家の火のついた藁束が投げ込まれる。消火しようとすると手榴弾が飛び込む。逃げるものは殺さなかったが,手向かえば立ちどころに死が与えられた。

戦争にあっては,道徳も倫理も人間とやらもそんな理性は遠くに消滅し,既に自分らも又,虫けらにも劣る動物になっていた。

仁木靖武さんは兵士が群がって,1人の中国女性を凌辱する現場も見た。

35,36の老兵ばかりであった。私と池田1等兵は彼らをかきわけ,入り口の戸を開けた。部屋の中で展開されている光景を見て私は思わず息をのんだ。すぐには声が出なかった。爺さんは入り口のすぐ横に倒れている。表情のない顔は明らかに死んだ顔である。そして娘は……。我々2人が呆然としている間にも,つぎつぎとけだものの様な行為が行われてゆく。

「コラッ,おんしらなにしよるぞッ」

池田1等兵が絶叫した。

老兵たちは去った。娘はじっとうずくまっていた。

「オイ,仁木どないする?」「どないするって……」「ずっと前,隊長が言った事,覚えとるだろう。たしか,憐憫の情はかえって仇(あだ)だ,ためにならんからひと思いに殺(や)ってしまえと……」「ウン,覚えてとる。しかし,おれはいやだ。お前がやるんならやれ」「お前がやれんもん,おれだってやれんよ」※。

ようやく人心地に戻った娘は,身じまいをすると私達にすがりついてきた。こんな娘をどうして殺せよう。

だがそんな仁木さんも,いつしか「人間」ではなくなってしまった己自身を見るのだった。

 (読売新聞大阪社会部『中国侵略』角川書店,昭和60年,p13,p197-198,)




私は稜線をちょっと降りたところで,隊長を待った。そのとき,なかに白い色が,隊列のなかに,まじっているのを,私は見た。白い色は,うす暗さを増してきている山の景色に,一際きわだっているが,とっさには,それがなんであるか,私には見当がつかなかった。

けれども,近づくにつれて,まもなく,私にはわかった。それは全裸の女なのだ。1個分隊くらいの間隔をおいて,その裸の女体は配置されている。あまりの唐突さに,私はこの場面の意味が,すぐには判断できなかった。

「貴様たち,この姑娘(クーニヤン)たちが抱きたかったら,へたばるんじゃないぞっ,-いい か,姑娘の裸をにらみながら,それっ,頑張るんだっ,-」。 

隊長は私の伝達を聞くために,馬から降りて,地面に立った。そのとき,1人の老婆が,なにか大声でわめきながら,隊長のそばに寄ってきた。裸にされて,極寒のなかに立たされている娘を,返してくれといっているらしい。娘たちは,さっき通過してきた部落からひっぱってきた女たちにちがいない。

老婆は,彼女たちのなかの自分の娘を追っかけてきたのだ。

うるさいというように,将校の1人が老婆をつきとばした。老婆は道路わきの地面に落ちて,仰むけにひっくり帰った。その姿勢のまま,まだしきりにわめいている。すると,隊長が,ひょいと腰をかがめて,両腕で西瓜ほどもある石を抱えあげたと思うと,老婆の方にむかって投げつけた。

「ぎゃっ」というような叫びが,山の空気をひき裂いて,老婆の頭は砕けた。ざくろのように白っぽい脳漿が,凍土に,どろりと流れた。

誰も,なんともいわない。一瞬,ひんやりしたようなものが,兵隊たちの胸から胸を流れたようだった。

「出発」。山脇隊長は,同じ調子の小声でつぶやい た。

まだ,びくびくと手足を動かせて,うなっている老婆を残して,ふたたび,隊列は,裸女たちをはさんで,粛々と動きだした。それは一糸みだれぬ,みごとな統 率ぶりであった

 (田村泰次郎選集』第4巻日本図書センター,2005年,p20-26)