安倍首相にとっての河野談話の詭弁な使い方
慰安婦問題でネトウヨと共鳴する意見を持つ安倍首相にとって、河野談話はいつかは破棄したいものである。しかし、自身のデタラメな歴史認識を問われ、追及された際に「河野談話を継承しています」「河野談話に書いてある通りです」と逃げ込める便利な道具でもある。
もちろん、この言葉は詭弁に他ならない。河野談話を本当に継承していると言い張るなら、河野談話で約束した「歴史教育」をしなければならないはずだが、かつて「若手議員の会」を率いて、教科書攻撃を繰り返して来たのは他ならぬ安倍自身である。
彼らは文化人が集まった華やかな「新しい歴史教科書をつくる会」などの活動の陰に隠れながら、文科省や教科書会社に街宣右翼と共に不断の圧力をかけて来たのだ。今日いつの間にか中学歴史教科書から「慰安婦」記述が消えてしまったのは、右翼勢力による総攻撃がなされたからである。
しかし、安倍にしろ右翼にしろ、そのような行動は、歴史に対する深い研究や洞察から生まれているわけではないので、その歴史修正主義の理屈は穴だらけである。彼らの場合、とにかく「慰安婦」と「南京虐殺」を否定したい情念だけが先にある。だから理屈が支離滅裂で国会でも追及されると、安倍は答えに窮して逃げ出そうとする。そのアイテムとしての言葉が「河野談話を継承しています」「河野談話に書いてある通りです」なのである。
少し長いができるだけ全文をお送りしたい。
以下検索システムより
○小川敏夫君 総理が汗を流した人が報われるのは当然だと言うのとは違うような社会状況が現実に生じておるんで、総理のその格差の認識をただしたわけですが、残念なことに、恵まれた人、あるいは総理の言葉を使えば勝ち組さえ勝っていけばいいんだと、それに乗り遅れた人は結局しようがないという総理の姿勢が、私にはそういうふうに感じられます。
時間がもっと十分あればもっと議論をしたいんですが、総理がいろいろお話しした格差対策、それについても中身がないということは、また実際のその法案の審議の場で十分議論させていただいてその問題点を指摘したいと思いますが、次の問題点、論点について質問をさしていただきます。
慰安婦問題、正にアメリカの下院においてこの慰安婦について日本国が謝罪すべきだというような決議案が出るかもしれないというような状況になってございます。総理は、この慰安婦問題について国の責任を認めた宮澤内閣時代のこの河野当時官房長官談話、これについてまずどのようにお考えですか。
今日、安倍政権下で格差が広がりつつあるが、すでに7年以上前に
安倍首相の姿勢が「 恵まれた人、あるいは総理の言葉を使えば勝ち組さえ勝っていけばいいんだ」・・・であることを指摘している興味深い答弁である。
「継承する」と言いながら「強制は無かった」と述べた安倍答弁の矛盾を突いているのだが、少し甘いので上手く逃げられてしまう。
○小川敏夫君 この三月一日に強制はなかったというような趣旨の発言をされたんじゃないですか、総理。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) ですから、この強制性ということについて、何をもって強制性ということを議論しているかということでございますが、言わば、官憲が家に押し入っていって人を人さらいのごとく連れていくという、そういう強制性はなかったということではないかと、こういうことでございます。
そもそも、この問題の発端として、これはたしか朝日新聞だったと思いますが、吉田清治という人が慰安婦狩りをしたという証言をしたわけでありますが、この証言は全く、後にでっち上げだったことが分かったわけでございます。つまり、発端はこの人がそういう証言をしたわけでございますが、今申し上げましたようなてんまつになったということについて、その後、言わば、このように慰安婦狩りのような強制性、官憲による強制連行的なものがあったということを証明する証言はないということでございます。
○小川敏夫君 今証言はないと言いましたね。しかし、実際にアメリカの下院において、アメリカ合衆国の下院において慰安婦をされていた方がそういう強制があったという証言をしている、だから下院で決議案が採択されるかどうかということになっているんじゃないですか。
今証言がないとおっしゃいましたね。実際にそういう体験をしたというふうに証言している慰安婦が現にいるわけですよ。そういう人たちの発言は証言じゃないんですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 言わば裏付けのある証言はないということでございます。
証言といえば、先ほど申し上げましたように、吉田清治氏の証言も証言じゃないんですか。全くこの人の証言はでっち上げだったということでございます。
つまり、「慰安婦の証言は信用してない」という意味だが、小川議員はちゃんと安倍に言わさなければならない。
○小川敏夫君 一度確認しますが、そうすると、家に乗り込んで無理やり連れてきてしまったような強制はなかったと。じゃ、どういう強制はあったと総理は認識されているんですか。
逃げ腰な安倍↓
○内閣総理大臣(安倍晋三君) この国会の場でこういう議論を延々とするのが私は余り生産的だとは思いませんけれども、あえて申し上げますが、言わば、これは昨年の国会でも申し上げましたように、そのときの経済状況というものがあったわけでございます。御本人が進んでそういう道に進もうと思った方は恐らくおられなかったんだろうと、このように思います。また、間に入った業者が事実上強制をしていたというケースもあったということでございます。そういう意味において、広義の解釈においての強制性があったということではないでしょうか。
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○小川敏夫君 それは、業者が強制したんであって国が強制したんではないという総理の御認識ですか。
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○小川敏夫君 だから、総理、私は聞いているじゃないですか。家に乗り込んで連れていってしまうような強制はなかったと。じゃ、どういう強制があったんですかと聞いているわけですよ。
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○内閣総理大臣(安倍晋三君) もう既にそれは河野談話に書いてあるとおりであります。それを何回も、小川委員がどういう思惑があってここでそれを取り上げられているかということは私はよく分からないわけでありますが、今正にアメリカでそういう決議が話題になっているわけでございますが、そこにはやはり事実誤認があるというのが私どもの立場でございます。
「河野談話に書いてある通りだ」と答える安倍。しかし、これは言い逃れに過ぎないので、自分の口からは決して明言しない。
ところで米国では一言も「事実誤認」と言っていない。
○小川敏夫君 アメリカの下院で我が国が謝罪しろというような決議がされるということは、我が国の国際信用を大きく損なう大変に重要な外交案件だと思うんです。
それで、事実誤認だから、じゃ、そういう決議案をもしアメリカ下院がすれば、事実誤認の証言に基づいて決議をしたアメリカ下院が悪いんだと、だから日本は一切謝罪することもないし、そんな決議は無視する、無視していいんだと、これが総理のお考えですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) これは、別に決議があったからといって我々は謝罪するということはないということは、まず申し上げておかなければいけないと思います。
この決議案は客観的な事実に基づいていません。また、日本政府のこれまでの対応も踏まえていないということであります。もしかしたら委員は逆のお考えを持っているのかもしれませんが、こうした米議会内の一部議員の動きを受け、政府としては、引き続き我が国の立場について理解を得るための努力を今行っているところでございます。
この後、安倍は訪米し、議会で弁明した後で、ブッシュと共に記者会見
「申し訳ない気持ちです。」と謝罪している。