河野談話を守る会のブログ2

ヤフーブログ閉鎖のため移住しました

続・「慰安婦高額報酬説の崩壊」掘和生教授の論文


(前頁の続き)



慰安婦高額報酬説は、ゴーマン漫画家が描いた後、秦郁彦西岡力によって権威つけられてきた。おそらく歴史学者の分類に入るだろう秦郁彦は、慰安婦と戦場の性』のp391~392で「慰安婦の有利な条件」として「高水準の収入」をあげている。これは掘教授によれば「俗説」にすぎない訳だが、秦は「これを収入金額でみると、内地の5倍以上、平壌遊郭の女たちに比べると10倍以上を稼ぎだしていたことが知れる」という。占領地を席巻したハイパーインフレや軍による「送金額の制限圧縮や強制現地預金制度」も、秦の考察には存在していない。
そして文玉珠さんについて、こう書いている。

「文玉珠は売れっ子だっただけに、3年足らずで2万5千円を貯金し、うち5000円を家族へ送金している。今なら1億円前後の大金である。」
 
こうした秦論説に対して経済史の専門家である堀教授は、「事実認識としてまったく間違っている。」と酷評している。http://www.kr-jp.net/ronbun/msc_ron/hori-1502.html




この日記が作成された慰安所は、軍兵站部酒保の管理下にあったが、完全な軍機関ではなく軍組織と民間にまたがる領域に存在していた。性サービスの提供については軍が管理していたが、日々の生活で慰安所は市場に依拠しなければならない面もあった。慰安婦慰安所経営者・従業員はハイパーインフレのなかで生きているのであり、そこは軍事費特別会計の円や物資配給が支配する領域ではない。このように慰安所は、日本帝国内で将兵の給与はどこでも同一であるごとく完全に統一されている軍の内部経済と、ハイパーインフレが進行している外部経済にまたがって存在していた。慰安所が兵士から受け取る花代は日記史料では円と書かれているが、実際はすべてルピーや海峡ドル表示の軍票(あるいは南発券)であった。そして、日本内地の円貨表示の水準でルピーや海峡ドル軍票を支払われても、それでは現地では到底生きていけない。これが、インフレ下で生きる慰安婦達の名目上の収入膨張が発生するメカニズムである。この日記によっても、慰安婦達の個別の収入全体は把握できない。ビルマにいた慰安婦の収入を確実に補足できる史料は、先に名前の出た文玉珠さんの事例である。1992年文玉珠さんが来日し日本政府に強く要求した結果、熊本貯金事務センター(現在、戦前の軍事郵便貯金を管理している機関 現在はゆうちょう銀行に移管)は、彼女の軍事郵便貯金通帳の貯金実績一覧を公表した(帳簿自体ではない)。これによって、ビルマにいた慰安婦の収入状態が明らかになった。文さんの場合、194336日からビルマの日本統治が崩壊する45523日までに25,846 円が貯金されている。マンダレー駐屯慰安所規定」(1943526日 駐屯地司令部)の遊興料金表は、兵士30150銭であった。彼女が先の収入をこの遊興料金(花代)で稼ごうとすると、稼働日や経営主の取り分を考慮すると、1日平均100人をこえる兵士を相手にしなければならない計算になる。もちろん、それはあり得ないことである。慰安所にも休業日もあり、将兵が全く来ない日もあったことは日記によく出てくる。連日フル稼働などということは不可能である。それが意味するとことはただ一つ、文さんの貯金は日本内地の円貨ではない、ハイパーインフレで価値が暴落しているルピー建ての収入であったということである。それが具体的にどのように彼女の手にはいったのかまではわからない。南方の慰安所は、日本軍の内部経済とハイパーインフレのなかにある軍外の現地経済にまたがって存在していたために、慰安婦達の収入にはこのような名目上の膨張が生じた。このようなハイパーインフレ下の見かけの収入額をもって、秦郁彦氏(20130613TBSラジオ番組「『慰安婦問題』の論点」)のように慰安婦が「日本兵士の月給の75倍」「軍司令官や総理大臣より高い」収入を得ていたと評価することは、過度な単純化ではなく事実認識としてまったく間違っている。
慰安婦慰安所での稼働で一定の収入を得ていたことは事実である。しかし、この収入の成果を享受する条件があったかどうかは別の問題である。

 名指しで「間違い」を指摘されている秦は今度はぜひちゃんと反論してほしいものだ。昔秦は、同じ歴史家である林博史教授に間違いを指摘され秦郁彦慰安婦と戦場の性」批判週刊金曜日290号http://www.geocities.jp/hhhirofumi/paper44.htm』)さらに永井和教授に人数論の根拠の間違いを指摘されhttps://ianhu.g.hatena.ne.jp/nagaikazu/20080402、今度は堀教授によって、名指しで問題点を指摘されたわけだが、常に無視し続けている。負けるのは分かっていても、ちゃんと議論に答えるべきである。
 
 
さて西岡力の著作の中の「高額報酬説」については、このブログですでに反論し、問題点を指摘しているhttp://blogs.yahoo.co.jp/kounodanwawomamoru/63986189.html
家が何軒も建てられるとか、書いている西岡だが、一体何を考えているのか?教えてほしいものだ。
 
また、吉見義明教授や林博史教授が関係しているホームページでも、1945年2月以降、送金は完全に不可能になったことが書かれている。
                                                  





すでに「慰安婦高額報酬説」は完全に崩壊したのである。








<参考>
従軍慰安婦の給料は高給だったのか
 http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs/10

インフレはあったのか(慰安婦の給料を考える)
 http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs/11

談話室
http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs/7