河野談話を守る会のブログ2

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それでも安倍が嘘つきでない事を望む


安倍が嘘つきなのは、政治を監視している人間なら、誰でも知っていることだろう。「嘘つき」は政治家の常とは言え、これほど不快な人物を見たのは初めてかもしれない。その不快さは、「戦後レジームからの脱却」とのたまいながら、「戦前レジーム」を野放図に賛美するグループと結託し、結局はいつか来た道を辿るだけの彼の”志”なるものに端を発している。そしてそれだけではなく、安倍政権が生まれ、悪霊に憑かれたようなネトウヨ、右派の支持と大多数の国民の盲目の中で政権を維持している構図そのものも不快なのである。
その安倍にとって”歴史問題ー特に慰安婦問題”は特別な意味がある。まだ政界入りしたばかりの安倍を奥野元法相が英才教育しながら、保守のプリンスとして引き立てたのが歴史問題だったからだ。特に奥野が表舞台に出なくなってからは、安倍が中心となって「慰安婦を歴史教科書から消す活動」をやって来たのである。そしてこの活動こそ安倍のやりたい”日本の名誉っを守る”に直結した活動なのであり、彼を総理大臣にまで押し上げた原動力でもあった。「日本の名誉が嘘によって不当に貶められている」というフレーズが無ければ、安倍の総理の座も無かっただろう。しかし根がおぼっちゃまなだけに、「河野談話を捨てて新しい談話」を標榜しても、一か月後にはヌランド(米政府)の批判を受けるとすぐにトーンダウンし、都合が悪くなると「歴史家に任せる」などとあちこちで言い始めたのである。

しかし、その任されたはずの歴史家たちが安倍にとっては決して楽しくない声明を出した。

25日午後、東京千代田区衆議院第2会館で日本の歴史学関連団体の記者会見が行われ、16団体(約6900人)の歴史家が賛同する声明文が発表された。(下)

国会で安倍が「歴史家に任せる」と述べたのは、自分の発言に含まれる嘘への批判から逃れるためだっただろう。女傑辻元議員やチームワークがいい共産党議員からの追及が厳しくなると「この問題は、総理である私が言明すれば国際問題になる」「歴史家に任せる」が批判の矢をかわす言論手段となったのである。言逃れの道筋を見つけたのだ。あるいは安倍の脳裏には自分と仲がいい幾人かの同じバイアスを共有する歴史学者の顔がちらついたのかもしれないが、彼はほとんどの歴史学者慰安婦問題で彼とはまるで違う見解をもっている事を理解していなかったようだ。「慰安婦制度は性奴隷制度である」は安倍の近くにいる歴史学者を除いて、ほとんどの歴史学者が肯定する説明なのである。それどころか、戦前、今と同じように神道信者・右翼が台頭し、皇国史観によって歴史を捻じ曲げたことを知っている歴史家たちが、安倍政権の歴史修正主義に強い危機感を抱いていることさえ気付いていなかった。あの過ちをもう一度繰り返してはならないからだ。そしてそれこそ歴史学の本当の使命なのである。

おそらく安倍は以前自分が述べた「歴史家に任せる」という言葉を反古にしようとするだろう。そんな事言ったっけ、という顔をして自分史さえ、歴史修正するわけだ。しばらくすれば大衆はそんなつまらない事なんか忘れてしまう事を彼は学習している。世の中の多くの人々は、自分たちが働き、子供を育て、飲み食いすることにしか関心が無いから、安倍の嘘もすぐに忘れてしまうのである。かつて第一次政権の時は、坊ちゃん育ちで、やわな神経で、妄想歴史を信奉する人物だったが、今は坊ちゃん育ちで、妄想歴史を信奉する人物なのは同じだが、「やわな神経」では無くなっている。経験し、したたかであり、「日本の権力者が常に引き継いで来た誤魔化しかた=たねき法」を体得し、憲法改悪の機会をしぶとく狙っているのである。

しかし自分で予測しながら、そうでなければいいなとも思っている。
つまり安倍が、少なくともネトウヨよりはまともな人間で自分の過去の発言を重く見ていてくれればうれしいのに。そうすれば70年談話も少しは意味あるものになるだろう。



慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明

 『朝日新聞』による20148月の記事取り消しを契機として、日本軍「慰安婦」強制連行の事実が根拠を失ったかのような言動が、一部の政治家やメディアの間に見られる。われわれ日本の歴史学会・歴史教育者団体は、こうした不当な見解に対して、以下の3つの問題を指摘する。
 第一に、日本軍が「慰安婦」の強制連行に関与したことを認めた日本政府の見解表明(河野談話)は、当該記事やそのもととなった吉田清治による証言を根拠になされたものではない。したがって、記事の取り消しによって河野談話の根拠が崩れたことにはならない。強制連行された「慰安婦」の存在は、これまでに多くの史料と研究によって実証されてきた。強制連行は、たんに強引に連れ去る事例(インドネシア・スマラン、中国・山西省で確認、朝鮮半島にも多くの証言が存在)に限定されるべきではなく、本人の意思に反した連行の事例(朝鮮半島をはじめ広域で確認)も含むものと理解されるべきである。
 第二に、「慰安婦」とされた女性は、性奴隷として筆舌に尽くしがたい暴力を受けた。近年の歴史研究は、動員過程の強制性のみならず、動員された女性たちが、人権を蹂躙された性奴隷の状態に置かれていたことを明らかにしている。さらに、「慰安婦」制度と日常的な植民地支配・差別構造との連関も指摘されている。たとえ性売買の契約があったとしても、その背後には不平等で不公正な構造が存在したのであり、かかる政治的・社会的背景を捨象することは、問題の全体像から目を背けることに他ならない。
 第三に、一部マスメディアによる、「誤報」をことさらに強調した報道によって、「慰安婦」問題と関わる大学教員とその所属機関に、辞職や講義の中止を求める脅迫などの不当な攻撃が及んでいる。これは学問の自由に対する侵害であり、断じて認めるわけにはいかない。
 日本軍「慰安婦」問題に関し、事実から目をそらす無責任な態度を一部の政治家やメディアがとり続けるならば、それは日本が人権を尊重しないことを国際的に発信するに等しい。また、こうした態度が、過酷な被害に遭った日本軍性奴隷制度の被害者の尊厳を、さらに蹂躙することになる。今求められているのは、河野談話にもある、歴史研究・教育をとおして、かかる問題を記憶にとどめ、過ちをくり返さない姿勢である。
当該政治家やメディアに対し、過去の加害の事実、およびその被害者と真摯に向き合うことを、あらためて求める。
 
2015525
 
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