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その頃の日本≪河北新報 1919.6.23(大正8)≫



今日本はかなりいい国になった。戦前に比べればの話である。
戦前の日本にはネトウヨのようなレイシストがたくさんいて、大手を振って歩いていた。現代のレイシスト達は先祖返りのようなものだと言えるだろう。

河北新報 1919.6.23(大正8)に掲載された記事を見てみよう。





朝鮮統治問題

村松亀一郎

 朝鮮の併合統治□我国に取って非常に重大な意義を有する事は改めて云う迄も無い、随って過般来の騒擾事件は決して軽々に附すべき問題で無い、吾等は力めて事の真相を究め其因って来れる所を明かにして断然禍根を女除し以て永遠万全の方策を考究しなければならない。 
 騒擾事件の発生したる原因は固より種々あるであろう、が日本官憲の横暴圧迫という様な事が其有力なる原因を成した事は、何うも事実であるらしい、実に在朝鮮の官憲の横暴は話の外な相で酷いのになると朝鮮人に臨むに恰も罪人に対するが如く常に圧制至らざる無きのみならず収賄涜職甚だしきは金品を強奪し婦女を辱むるというような言うに忍びざる悪業を積むだとさえ伝うるものもある勿論斯ういう事は稀に起る事であっても、それが誇大に吹聴せられ朝鮮人に対して日本の官憲は斯くの如く悪辣なものだという観念を与うる事は、慥に排日思想を誘発する動機たるに相違無い、夫れに役人許りでは無く一般内地人も亦常に軽侮の念を以て彼等に接し之亦横暴至らざる無き有様なので永い間鬱積した彼等の反感の一方ならざる事が容易に想像されよう。 
 我輩は明治三十八年日露戦争当時藤沢君や岩手県選出の故阿部代議士等と共に満洲軍慰問旁々彼地に赴いた時既に日本人の朝鮮人に対する態度を目撃して之は困った事だと思った、一二の例を挙げると我輩が俥に乗った、スルト向うから朝鮮の紳士が遣って来た、紳士は俥を避け様とした、所が俥屋の奴が避様とする方へ態と梶を遣突然紳士に突当って転がして置き乍ら却って散々毒口を叫いて其儘挽いて去ろうとする、其処で我輩大いに俥夫を叱責した所が、俥夫は済したものでナアニ此位な事をして遣らぬと癖になりまサア、とか何とか云って振顧ろうともしない又或停車場では鉄道の役人が何をしたか朝鮮労働者を酷たらしく殴り付け揚句の果てに彼等労働者の貴重なる道具の背負具を折棄た労働者は悲気に泣く傍で警官が見て居て制し様ともせず知らぬ顔をして居た又或時途上で一人の日本人が朝鮮の風俗で婦人が被衣を被って来のを突如捉えて被衣を捲り中を覗いた斯る事は彼地の風習として最も忌む処、何れは人妻であろうが、実に失敬千万な振舞と云わねばならぬ、此外言語道断と思われる数々の出事を到る処で目撃し将来の累を思うて私かに寒心に堪えざるものがあった。 
 我輩が渡鮮したのは勿論併合前であるから其後風俗や何かに余程変化を見たに違いないが内地人の此圧刮暴慢は併合後猶今日に至るも矯正されず、其の上に総督政治下の役人の圧迫不正が行われたとすれば鮮人の反感も強ち無理では無いで此度の暴動など確に其一因が此処に発して居るに相違ない。 
 併合後道路か非常に立派になったと云って総督府の役人は誇って居るけれ共段々取訊すとそれは総督府賦役を命じ人夫を只使って行ったものだ、又併合後朝鮮人は非常に幸福になったという、無論幸福になったに違い無い。けれ共彼等の風俗や習慣等を改めるに就ては漸を以て不知不識改めるならいいが法令又は権力を以て強制的に改廃する事は植民地の統治上其当を得たものとは云われぬ、風習や其他の改廃に依って彼等が真に幸福を感じて居るか否やは疑問とせぬばならぬ。 
 圧制話の序だが、過般憲政会総務の某氏が原首相へ質問した事件がある、それは某外国雑誌へ載せて居た報道を都新聞が訳載した事実で、実に驚嘆すべき事件が報道されて居る、何でも朝鮮のある地方部落で日本の巡査が虐殺されたすると軍隊がその村へ急行して老若男女を問わず村民一同を其処の教会堂へ集めた、村民は多分一応取調べを受けるか或は説教を聞かされる位の事に思って参集した、所が一同教会堂へ這入と其儘戸を悉く閉鎖し逃路や塞いで置いて一斉射撃を行い之れを戮殺したという事件である、米国の宣教師などが此の光景を目撃して直ちに本国へ通信した事は云うまでもない此事に就て原首相も全然打消さなかった処を見るとそれが事実らしく偶在米の朝鮮独立運動等に立派な口実を与えた、斯かる事が凡て彼等に一層反感を募らせる本となった、而も彼等は之れ日本の総督政治の然らしむる処と考え総督政治を嫌う事蛇蝎の如きものがある、事実彼等をして此処に至らしめたのは武官総督政治の弊であるかも知れぬ、今にして根本的革正を断行するに非ずんば今後如何なる事件が勃発せぬとも限らぬのである。 
 殊に寺内総督の統治の方針が今猶大なる禍根をなして居る、寺内総督は先ず盛んに新聞政策を濫用し在朝鮮の新聞をして総督政治の善をのみ報道せしめ断じて悪きを掲載せしめず事実若悪ありとするも之を善に曲げて報道せしめ偶内地の新聞等にて悪政を摘発し若しくは不利益の記事を掲ぐるものがあれば直に之を押収した、其の他凡てが此の陋劣なる遣方であったから情弊纏線物議紛々総督府は方に暗黒の府と化せる観があった今次の騒擾事件に依って之等朝鮮統治上の悪政は遺憾なく暴露されたと同時に総督政治革正の叫びが国内の与論を喚起した。 
 今後は飽く迄国民の与論に随い真の民政を以て文明的政治を施さねばならぬ、就ては武官のみを総督に任ずるが如きは不可である、と同時に従来の制度を改正しなければならぬ、苟くも政党内閣たるもの之位の制度改正を断行し得ない筈はない、且朝鮮人に或程度の自治を許し、官吏任用等に関しても日本人同様の待遇を与えて遣るべきである、彼等と雖も相当の学問あり才智勝れたものが少くない才能あるものを其処を得せしめざるが如きは大いに不可である、勿論教育の方法も大いに改めなければならない、兎も角此の機会に於て従来の総督政治に大革正を施し凡ての禍根を絶たなければならぬ然らざれば何時復た過般の如き事件が勃発せぬとも限らぬ。 
 内能く統治が行なれて居るなら他の煽動の如きは敢て意とするに足らぬ筈である。(談)