河野談話を守る会のブログ2

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侵略思想の淵源(4)戦前日本の「○○は生命線」という言い回しについて


侵略思想の淵源(5)戦前日本の「○○は生命線」という言い回しについて

現在の安倍政権による「戦争法案」(安保法制)に関する答弁を聞いていると、まるでデタラメである。


 
安倍晋三くん、どの答弁を信用すればいいの?

●【安保法案】党首討論では「ホルムズ海峡しか念頭にない」「そこから逃げてはダメ」
●今日の答弁「ホルムズ海峡は想定してない」




こんな答弁ばっかりであり、これを「詭弁を弄する」と我々はいう。

「詭弁を弄する」のは、結論がすでに決まっているからだ。もう「戦争法案」を造るのは安倍たちには規定路線なので、後はどんな屁理屈でそれを正当化するか・・・・だけである。そういう訳で、出てくる答弁が全て嘘とデタラメ。そしてそれは「秘密法」の時も同じだった。

こうした詭弁の造り方は実は、戦前もあった事なのだ。というよりも、戦前侵略戦争をする理屈のほとんどが、詭弁を弄したやり口で臣民を翻弄したのである。
戦前の明治維新の大立者たちや軍部のエリートたちにとって、大日本帝国が国威を発揚し、アジアの支配者になる事は、言うまでもなく(前提として)正しい事だった。天照という神の子・天皇をいただく我々が世界の頂点に立つのは当たり前だ、と彼らは考えていた。彼らの師匠筋がこぞってそんな教えを垂れていたからだ。佐藤信淵吉田松陰については、このブログにも取り上げているが、要するに、「我々は優れた民族なのだからアジアを征服しろ」という教えである。さらに欧米が植民地を持っているのを見て、我々も植民地争奪戦に加わろうと欲を出したという訳だ。そこで「植民地を得る」が規定路線であり、後はその時、その時、説得力の有りそうな屁理屈を造ったのである。

その屁理屈が「○○は我々日本人にとって生命線だ」という言い回しである。



例えば、砂漠の真ん中に暮らしている人がいて、「この井戸は私たちの生命線です」と言えば、なるほどそうだろうなーと頷くだろう。水は誰でも必要であり、もし井戸がひあがったり、毒が投げこまれたりしたら、そこに住んでいる人々は「生死」に関わるだろうからだ。

ところが、「朝鮮は我々日本人にとって生命線だ」とかいう言い回しになるととたんに眉つばものになってしまう。しかし明治以来の大日本帝国の中では、この「○○は日本の生命線である」という言い回しが、たえず使われ、侵略の大義名文として使われたのである。

http://www.awf.or.jp/pdf/0062_p107_141.pdf p112「東南アジアは日本の生命線と言われていた」)

この言い回しに大義があるとは我々には到底思えないが、戦前の人々にとって、「お国のために」は、最高の善のように思われていた。現在のように「国民」ではなく「臣民」と呼ばれた時代であり、記紀神話に依拠する天皇絶対主義憲法教育勅語と学校教育、軍人勅諭・・・等、ありとあらゆるところから、天皇が神である事やそれに対して臣民がいかに忠誠を尽くさなければならないか、が唱えられていた時代なのである。いわばそれが世の中のスタンダードだった訳だ。こうした時代の空気の中では「お国のために」という言い回しに逆らえる者などごく少数であり「お国のために」は有力な大義名文に成りえた。その「お国のために」の中に「○○は日本の生命線である」という言葉が存在しており、同じ意味合いを持つバージョンとして「○○は日本の利益線である」という言い回しもある。これらの言い回しが、ある時には朝鮮侵略に使われ、ある時には満州と中国侵略に使われ、さらに南方への侵略へと使われる事になる。「生命線」だらけ、「利益線」だらけである。結局は、自分たちが侵攻したいところを「○○は生命線」と言っていただけと言えるのだ。


「今日我が民族は、地上で滅亡する時点に、あるいは奴隷民族として他の民族に奉仕することになる危機に陥っている。我々は我が祖国の存続のために、我々の子供たちの毎日のパンのために、格闘しなければならない。闘争によって、武力によって、最後の精神力まで緊張させ、世界の強国となり、あたらしい領土を獲得することによってのみ、我が偉大なドイツ民族は生存することができる」

ヒトラー我が闘争で危機感を煽ったように、大日本帝国も危機を煽り、ヒトラーが「祖国の存続のために、我々の子供たちの毎日のパンのために」と防衛のための闘いだと扇動したように、我が国でも様々な扇動がなされた。

そしてそれはまた
ゲッベルスが、こんな風に述べたようにただの宣伝だったのである。

「思想宣伝には秘訣がある。
何よりもまず、宣伝の対象人物に、それが宣伝だと気づかせてはならない。」

ーヨーゼフ・ゲッベルス(ドイツの政治家、ナチ政権での国民啓蒙・宣伝大臣、1897~1945)



欲望のままに行動しており、後にマッカーサが述べたように、「10才のガキ」の所業である。「軍人は小児に近いものである」と芥川龍之介は書いたが、まさにその通りだっただろう。 (『 侏儒 しゅじゅ の言葉』http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/158_15132.html

結局はそこに侵攻したいと思ったら、「○○は日本の生命線である」と言っておけばよいからである。

我々はこの手のペテンには、気をつけなくてはならない。
何かをするために、後付けで理屈を造るのである。だから説得力がまるで無い。現在、自民党政権がやっている事もまったく同じようなやり方であり、だから国民を説得できないでいる。「特定秘密法」の時も今回の「戦争法案」でも、法案を強行に成立させた後で安倍は「国民に説明して行く」と述べたが、「特定秘密法」の説明さえまだしておらず、口先だけのペテン師の言い分である。こうしていろんな誤魔化しやダーティなやり方が入り込むことになる。

我々は詭弁を弄して国民を騙すヤクザ国家に伝統の中に住んでおり、このヤクザ国家の伝統を変えていかなければならない。それが子孫たちへの義務であると思う。