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『帝国の慰安婦』事態に対する立場

(12/2)ソウルにて朴裕河教授、そして朴裕河教授を擁護し検察の起訴を非難する金哲教授らの会見が行われました。

しかし「学問と表現の自由」という観点でのみ『帝国の慰安婦』に関連する事態にアプローチする態度に憂慮する研究者も多くいます。



日本軍「慰安婦」被害者たちの痛みに深く共感し、慰安婦」問題の正当な
解決のために活動する研究者・活動家一同による

      『帝国の慰安婦』事態に対する立場

 日本軍「慰安婦」問題について深く考えこの問題の正当な解決のために努力してきた私たちは、朴裕河教授の『帝国の慰安婦』に関連する一連の事態に対して実に遺憾に思っています。

 2013年に出版された『帝国の慰安婦』に関連して、2014年6月に日本軍「慰安婦」被害者9 名が朴裕河教授を名誉毀損の疑いで韓国検察に告訴し、去る11月18日に朴裕河教授が在宅起訴されました。これに対し、韓国の一部の学界や言論界から学問と表現の自由に対する抑圧であるという憂慮の声が出ており、日本では11月26日に日本とアメリカの知識人54名が抗議声明を発表しました。

 私たちは原則的には研究者の著作に対して法廷で刑事責任を問うという方式で断罪することは適切でないと考えます。しかし、私たちは学問の自由と表現の自由という観点からのみ『帝国の慰安婦』に関する一連の事態にアプローチする態度については深く憂慮せざるをえません。日本軍「慰安婦」問題が日本の国家機関の関与のもと本人の意思に反して連行された女性たちに「性奴隷」になることを強いた、極めて反人道的かつ醜悪な犯罪行為に関するものであるという事実、その犯罪行為によって実に深刻な人権侵害を受けた被害者たちが今この瞬間にも終わることのない苦痛に耐えながら生きているという事実こそが、何よりも深刻に認識されなければなりません。

 その犯罪行為について日本は今、国家的次元で謝罪と賠償をし歴史教育をしなければならないということが国際社会の法的常識です。しかし、日本政府は1965年にはその存在自体を認めなかったため議論さえ行われなかった問題について1965年に解決されたと強弁する不条理に固執しています。日本軍「慰安婦」被害者たちはその不条理に対し毎週水曜日にすでに1200回以上も「水曜デモ」を開催しており、高齢の身をおして全世界を回りながら「正義の解決」を切実に訴えています。私たちは、これらの重い事実を度外視した研究は決して学問的でありえないと考えます。

 私たちは、『帝国の慰安婦』が事実関係、論点の理解、論拠の提示、叙述の均衡、論理の一貫性などさまざまな面において多くの問題を孕んだ本であると思います。既存の研究成果や国際社会の法的常識によって確認されたように、日本軍「慰安婦」問題の核心は日本という国家の責任です。それにもかかわらず『帝国の慰安婦』は、責任の主体は「業者」であるという前提に基づいています。法的な争点に対する理解の水準はきわめて低いのに比べて、主張の水位はあまりにも高いものです。充分な論拠の提示をせずに、日本軍「慰安婦」被害者たちが「自発的に行った売春婦」であり、「日本帝国に対する『愛国』」のために「軍人と『同志』的な関係」にあったと規定することは、「被害の救済」を切実に訴えている被害者たちに更なる深刻な苦痛を与えるものであるといわざるをえません。このように、私たちは『帝国の慰安婦』が充分な学問的裏付けのない叙述によって被害者たちに苦痛を与える本であると判断します。ゆえに、私たちは日本の知識社会が「多様性」を全面に押し出して『帝国の慰安婦』を積極的に評価しているという事実に接して、果たしてその評価が厳密な学問的検討を経たものなのかについて実に多くの疑問を持たざるをえません。

 私たちは、この事態を何よりも学問的な議論の中で解決しなければならないと考えます。韓国と日本と世界の研究者たちが問題について議論し、その議論の中で問題の実態を確認し解決方法を見つけるために、ともに知恵を出し合うことが必要であると思います。そこで、私たちは研究者たちが主体になる長期的かつ持続的な議論の場を作ることを提案します。また、その一環として、まず朴裕河教授や『帝国の慰安婦』を支持する研究者たちに、可能な限り近いうちに公開討論を開催することを提案します。

 最後に、私たちは名誉棄損に対する損害賠償請求と告訴という法的な手段に訴えねばならなかった日本軍「慰安婦」被害者らの痛みを深く反芻し、日本軍「慰安婦」被害者たちにさらなる苦痛を与えるこのような事態に陥るまで私たちの思考と努力が果たして十分であったのかどうか深く反省します。また、外交的・政治的・社会的な現実によってではなく、正義の女神の秤が正に水平になるような方法で日本軍「慰安婦」問題が解決されるよう、更なる努力を重ねていくことを誓います。 


2015.12.2.

日本軍「慰安婦」被害者たちの痛みに深く共感し
慰安婦」問題の正当な解決のために活動する研究者・活動家一同

(1次署名者71名)
ユン・ジョンオク(元梨花女子大学)、チョン・ジンソン(ソウル大学)、ヤン・ヒョナ(ソウル大学)、キム・チャンロク(慶北大学校)、イ・ジェスン(建国大学校)、ジョ・シヨン(建国大学校)、イ・ナヨン中央大学校)、イ・シンチョル(成均館大学校東アジア歴史研究所)、カン・ソクチュ(ソウル大学校)、カン・ソンヒョン(聖公会大学校)、カン・ジョンスク(成均館大学校)、コン・ジュンファン(ソウル大学校)、クァク・キビョン(ソウル大学校)、クォン・ウネ(東国大学校)、キム・キョソン(中央大学校)、キム・ギオク(漢城大学校)、キン・ミョンヒ(聖公会大学校)、キム・ミラン聖公会大学校)、キム・ミンファン(聖公会大学校)、金富子(東京外国語大学)、キム・ウンギョン(放送通信大学校)、キム・ユンジョン(歴史学研究所)、キム・ジナ(ソウル大学校)、キム・ヘジョン(全北大学校)、ド・ジンスン(昌原大学校)、パク・ノジャ(Vladimir Tikhonov, Oslo University)、パク・ジョンエ(東国大学校)、パク・ジンギョン(仁川大学校)、パク・ヘスン((社)韓国軍事問題)、ペ・ギョンシク(歴史問題研究所)、ペ・ウンギョン(ソウル大学校)、ペク・シジン(中央大学校)、ペク・ジェエ(ソウル大学校)、ペク・ジョヨン(中央大学校)、ソン・チャンソプ(放送通信大学校)、シン・グリナ(ソウル大学校)、シン・ヘス(梨花女子大学校)、シン・ヘスク(ソウル大学校)、オ・ドンソク(亞洲大学校)、オ・スンウン(漢陽大学校)、ユン・ギョンウォン(東アジア社会文化フォーラム)、ユン・テウォン(ソウル大学校奎章閣韓国学研究院)、ユン・ミョンスク(忠南大学校)、イ・キョンス(中央大学校)、イ・キョンジュ(仁荷大学校)、イ・ミナ(中央大学校)、イ・ドンキ(江陵原州大学校)、イ・ミョンウォン(慶熙大学校)、イ・ヨンスク一橋大学)、イ・ジョンウォン(聖公会大学校)、イ・ジウォン(大林大学校)、イトー・ターリ(パフォーマンス・アーティスト)、板垣竜太(同志社大学)、イ・ハヨン(中央大学校)、イム・ギョンファ(延世大学校)、イム・ジョンミョン(全南大学校)、イム・ジヒョン(西江大学校)、ジョン・ガプセン(ソウル大学校アジア研究所)、ジョン・ミョンヒョク(東国大学校)、ジョン・ミレ(性売買問題解決のための全国連帯)、ジョン・イリョン(西江大学校)、ジョン・スルギ(中央大学校)、ジョン・ヒョンジュ(梨花女子大学校)、ジョン・ヒョンヒ(ソウル大学校)、チ・ナオミ(北海道大学)、チェ・ジョンギル(高麗大学校グローバル日本研究院)、ハン・ボンソク(歴史問題研究所)、ハン・スンミ(延世大学校)、ハン・ヘイン(韓国女性人権振興院)、ホン・スンクォン(東亜大学校)、古橋綾(中央大学校)