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『帝国の慰安婦』著者朴裕河を告訴したのはハルモニたちである、言論弾圧ではない



当会はこの鄭栄桓教授の主張に賛同する。
朴裕河に対する訴訟は、「名誉棄損」裁判であり、「言論や学問の自由の問題」ではないからである。

週刊金曜日』12月4日号に、北方農夫人の名前で慰安婦問題にまるで無知な朴裕河擁護論調の記事が載ったので、当会はすでに問題点を指摘し抗議文を送っている。今後の展開を期待する。






『帝国の慰安婦』著者を告訴したのはハルモニたち、弾圧ではない

鄭栄桓明治学院大学教授

鄭栄桓明治学院大学教授=キル・ユンヒョン特派員//ハンギョレ新聞社
 韓国警察が先月18日、パク・ユハ世宗大学教授の著書『帝国の慰安婦』に対する起訴を決定してから、韓日両国で激しい賛否両論が続いている。先月26日、日本の知識人たちが、今回の起訴の「抗議声明」を発表したのに続き、2日、韓国でも似たような趣旨の声明が公開された。在日朝鮮人3世として、今年「歴史批評」夏号の紙面を通じて『帝国の慰安婦』を鋭く批判した鄭栄桓(チョン・ヨンファン)明治学院大学教授は「パク教授に対する検察の起訴を単に権力による言論弾圧として捉えるのは、適切ではない」として「パク教授の本は数多くの誤りと飛躍を犯しており、(日本帝国に)愛国する存在という慰安婦のイメージを“本質”と主張するなど、(慰安婦被害者)ハルモニ(お婆さん)たちが名誉を毀損されたと感じるような、少なからぬ問題を内包している」と指摘した。

日本で慰安婦問題を研究してきた 

「日本の一部知識人たちによる反対声明の原因とは? 
慰安婦に対する法的責任を求めることを 日本のリベラルは反日として捉えている」

 -先月26日、日本の知識人たちが韓国検察の起訴決定を批判する内容の声明を出した。

 「声明には二つの問題がある。まず、今回の起訴事態がハルモニたちの告訴で始まったという点について言及していない。第二に、同書が「ハルモニたちの名誉を毀損したとは考えにくい」と主張している。声明は、今回の事件を公権力が特定の歴史観を抑圧するものとして捉えているが、問題の原点は、ハルモニたちが自分たちの名誉が毀損されたと思って告訴したことにある。単に権力による言論弾圧として捉えるのは適切ではない。もちろん(同書に込められた表現が)処罰を加える程度の名誉毀損かどうかについては、裁判所が判断しなければならない。しかし、声明が名誉毀損自体を否定したのは過ちではないかと思う。『帝国の慰安婦』には歴史修正主義的な内容も含まれているが、声明を出した方々が、この本の内容をよく理解していないような気もする」

 - あなたが思う同書の問題は何か。

 「根拠のない主張、論理的な飛躍、互に矛盾する記述、恣意的な史料の解析など、内容について議論する前に、深刻な方法論的な欠陥がある。内容における問題は、大きく分けて二つだ。第一に、日本軍慰安婦制度が戦争犯罪であり、日本はこれに対して“法的責任”があるという認識が欠けている。同書はその代わりに朝鮮人業者の法的責任を強調し、(慰安婦の募集と設置・運営など)軍が関与した歴史的な事実について、これまでの研究が明らかにした事実を軽視している。それとともに、日本には『需要を作りだし、人身売買を黙認した』程度の責任があるだけだと主張する(同書はこれを、法的責任に問われない、道徳的な意味としての罪としている)。第二に、慰安婦の生活を強いられ方の意識と内面を恣意的に記述して勝手に代弁している。同書は、慰安婦の本質が日本の戦争遂行を助ける『愛国』的存在であり、当事者たちもその役割を受け入れたと主張している。これを記述する過程で(名誉毀損訴訟の主な内容となった日本軍兵士と朝鮮人慰安婦が)『同志的な関係』にあり、女性たちに『同志意識』があったという表現も出てくる。しかし、女性がそのような主観的な意識を持っていたという主張には、何ら根拠がない」

 - 根拠がないとはどういう意味か。

 「女性たちが愛国的存在だったと、パク教授が推測する根拠の一つが、千田夏光の『従軍慰安婦』(1973)という本だ。パク教授は千田が慰安婦を愛国的な存在として捉えており、それが慰安婦の本質だと主張している。しかし、(実際の本を読んでみると)千田はそのような主張をしていない。日本人慰安婦がそのようなことを思っていたという証言も紹介されているが、朝鮮人慰安婦が愛国意識を持っていたとは書いていな。日本人の事例を朝鮮人に適用する飛躍を犯しているのである。パク教授は、朝鮮人慰安婦が日本人と同じ大日本帝国の臣民であるため、戦場で敵国の国民だった中国や東南アジアの女性と質的に異なる存在だと主張している。これは、同書の主要な主張であり、証明されるべき仮説だ。しかし、(パク教授は)証明しなければならない自分の仮説を結論とし、史料を勝手に解釈している。これは、学術論争以前に、文献解釈における初歩的な誤りだ。問題になった『同志意識』を取り上げる際にも、日本人作家が書いた小説に登場した朝鮮人慰安婦のセリフをそのまま写している。つまり、小説の中の朝鮮人慰安婦が『慰安婦になったのも運だ。兵士たちが弾に撃たれるのも運だし」と言ったことを挙げて、朝鮮人慰安婦に『同志意識』があったからこそ兵士を犠牲者として捉えていたと主張する。これはあくまでも小説に出てくる朝鮮人の姿だ。これで当事者の意識を証明することはできない。他にも多くの誤りがある。パク教授は、このような誤りと飛躍を犯して作り上げたイメージを、慰安婦の“本質”と主張して一般化している。ハルモニたちが名誉を毀損されたと思うのは当然のことだ」

 - 日本の知識人たちが、このような声明を出した根本的な原因は何だろうか。

 「声明を読んでみると、日本の知識人たちは、韓国という国は反日的な言説しか受け入れられないという先入観を持っているようだ。だから検察が出て起訴をするという論理だ。実際に韓国の検察には多くの問題があり、権力者たちが名誉毀損罪を悪用してきたのも事実だ。しかし、今回の訴訟を言論弾圧とするのはあまりにも問題を単純化することだ。この声明から見られるのは、同書を高く評価している日本の知識人たちの欲望だ。日本の知識人たちが同書を評価するのは、内容が素晴らしいからというよりも、同書の主張がリベラル知識人たちの欲望にぴったり合ったためと思われる。 1990年代に慰安婦問題の解決のために、日本が選択したのは、(韓日間の請求権の問題は、1965年の韓日協定ですべて解決されたという)『65年体制』を維持する形での解決だった。日本社会は、慰安婦問題が日本の戦争犯罪であるため、“法的責任”を負わなければならないということを認めない方法で、1995年に『アジア女性基金』などの解決策を出した。しかし、被害者たちはこれを受け入れず、加害者の処罰、真相究明、法的責任を認めた賠償、歴史教育などを主張した。このような韓国の主張を日本のリベラルたちは行き過ぎた“反日”として捉えたのだ。彼らは2011年8月に示された韓国の憲法裁判所による慰安婦関連の違憲決定なども、そのように捉えている。『韓国の民族主義が行き過ぎてしまったのではないか、慰安婦問題に対する韓国の主張は民族主義的過ぎて、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の主張は、あまりにもひどいものではないか』という認識だ。このような日本のリベラルの心情に合う主張を、パク教授という韓国人がしてくれたことが嬉しかっただろう。彼らは、戦後の日本は、他のどの国よりも植民地清算に積極的だったし、韓日協定とアジア女性基金で“実質的補償”もしたと評価している。被害者の名誉よりも、自分たちのプライドを優先しているように見える」

 - それでも韓日で慰安婦問題を解決しなければならないが。

 「解決とは何なのかをもう一度考えなければならない。慰安婦問題を外交問題として考えている人と、日本の戦争犯罪問題という観点から見る人がいる。この二人は慰安婦問題という同じテーマについて語りながらも、基本的な視点が異なっている。いかに『外交的に和解するか』という枠組みで話をすると、韓国は現在、日本政府が選択できる範囲内で提案せざるを得ない。少女像の撤去や移動などの話が出てくることも、このような外交的和解を望んでいるからだ。このような観点に立つと、慰安婦被害者と支援団体が韓日間の和解の障害となる。パク教授の主張は、事実上、日本軍と『同志的な関係』にあり、日本の戦争遂行に協力して愛国したハルモニたちを、日本が受け止めてあげなければならないということだ。慰安婦問題を解決するためには、軍が侵略戦争の過程で慰安所を作ったこと自体が、戦争犯罪だったという事実を認めなければならない。『帝国の慰安婦』にはこのような視点がないため、批判されているのだ。少女像に込められた慰安婦のイメージが一面的であるなら、別の女性像を作れば良い。外交的和解ではなく、日本が加害責任を果たすことを目的にしなければならない。それが出発点だ」


東京/キル・ユンヒョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: :2015-12-02 19:47