河野談話を守る会のブログ2

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慰安婦否定論の源流① 1992年2月の『神社新報』 中村粲の主張



ある一つの考え方、思想の流行は一点から始まる。

それが正しいものであろうと間違っているものであろうと、

正論であろうと詭弁であろうと

全ては誰かから始まる。

南京事件否定論と同様、それが神社界から始まったであろう事は推測がついていたが、やはりというべきだろう。

1992年と言えば、あの産経新聞もまだまともな記事を書いていた。産経が神社界や右派論壇の影響を受け、慰安婦否定論を色濃く打ち出すのは、1996年ころからである。

あの西岡力でさえ「強制売春だった」と書いていた時期であるhttp://blogs.yahoo.co.jp/kounodanwawomamoru/64739279.html

この神社新報1992年2月24日の中村粲記事は全てに先だっている。

発端はここにあったのである。



① 「一を譲れば二を欲し、二を与えれば四を求めるのが韓国・朝鮮人の通性であるから・・・」

韓国・朝鮮人の民族性を貶めるヘイトな言説を交えながら
後の『WILL』や『正論』に掲載される言論、あるいはネトウヨの理屈の原型のような主張である。
つまり、悪いのはこっちではなく、あっちだと言っているのだ。




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② 「首相訪韓を前に俄かにマスコミによって取り沙汰されるに至ったため、周章狼狽して冷静に対応できなかったこともあろう」

秦郁彦の『慰安婦と戦場の性』も、ここから始まっている。朝日新聞が九二年1月11日の記事を書いたから、狼狽してしまったというストーリーである。しかし、前年の12月には日本政府も同様の資料を発見していたことが、2014年政府が行った「河野談話の成立過程の検証」で明らかになっている。狼狽したかどうかは想像でしかない。
朝日の記事を捏造混じりに重視するのが彼らの慰安婦ストーリーである。我々にとっては1991年8月14日の金学順さんのカミングアウトが慰安婦問題の大きな節目だが、彼らにとっては朝日新聞から始まったことになっているらしい。
神社新報』における朝日新聞攻撃は、ここで始まったわけではない。80年代にはすでに南京事件や『新編日本史』騒動、靖国参拝を巡り、神社勢力は朝日新聞に怒りを向けていた。神社と右翼団体は繋がっている存在である。



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③ お騒がせな「慰安婦はただの公娼だ」論の始まり
 「当時我が国で一般に是認されていた公娼が、主として支那事変勃発以後、我軍の占領地域に進出したものである。」
従軍慰安婦は、内地の公娼と連続した存在であると規定してほぼ間違いない。これが従軍慰安婦問題を考える出発点である。」

この手の主張が日本で生まれ「慰安婦はただの売春婦だ」と後先見えないボンクラな政治家が公言したがために、せっかく宮沢や河野談話の謝罪も無意味となり、その後何度も謝罪を確認することになってしまったのである。

慰安婦はただの公娼だ」論については、すでに問題点を指摘している。

公娼制度自体が奴隷制度に他ならないのである。
 

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④「国家民族の名誉よりは」

<国家民族の名誉>重視の国家主義からの批判と言えるだろう。この手の国家主義者が増えたのが今日である。
いや、国家主義というよりも、ジャパン・タイムスニューヨーク・タイムズが書いていたように「靖国カルト」とか「国家神道カルト」というべきかも知れない。

戦前、我が国は神社を国家宗教とする神道国家であった。
その神社勢力が増大することによって、侵略戦争がなされたのである。アマテラスを絶対神とし、「天壌無窮の神勅」とか言いながら、国家体制を造り、神宮大麻教育勅語天皇の写真への礼拝を強要し、海外に進出しては、神社を創建し参拝を強要したのであった。

その全ては一種の宗教妄想の産物であったと言えるであろう。
<我が日本民族こそ天孫民族であり、世界を支配すべき民族である>と公言する国学神道家たちがいたからである。


まるでマンガの中の悪役である。仮面ライダーの中で世界征服を狙う悪の秘密結社のようなものだ。戦前日本はこの手の宗教妄想が溢れた国であった。http://blogs.yahoo.co.jp/kounodanwawomamoru/63802457.htmlそしてその宗教妄想から、他民族蔑視と侵略思想が生まれたのである。そして今日においても、その戦前の回帰しようと「神社を国政の基礎に置く」ための≪改憲≫をもくろんでいるのである。

その神社勢力がこうした「慰安婦否定論」を最初に出したのは象徴的である。
中村粲と言えば、近年歴史修正主義の本家というべき人物の一人である。1990年の著作大東亜戦争への道』では、あの300以上にのぼる料改竄で有名な田中正明『”南京虐殺”の虚構』をそのまま引用しながら南京事件を否定し、日本軍の傀儡政権の保安隊兵士引き起こした約200人が殺された事件である通州事件を「世紀の大虐殺扱い」している(大東亜戦争への道』p401-p410)。通州事件いわば飼い犬に噛まれた事件であり、被害を受けたのは、麻薬業者が多かったというが、http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp/dspace/bitstream/10191/18156/1/19_57-68.pdf そういう事も知らないらしく、さらにそんなところに軍が進出していた是非を問う事さえなく、戦前の軍の発表を鵜呑みにしている。これがいわば1990年以降、今日に続く歴史修正主義の原点となった著作の一つなのである。

中村粲慰安婦論はここに公開されている。何だかデタラメな事ばかり述べている。



河野洋平と憎々しげに呼び捨てにしている











① 3:19~
「20人の慰安婦と2人の朝鮮人の業者」なんて言っているが、二人の業者は北村夫妻であり、日本人である。

② 3:45~
「米軍の資料には、強制連行された、甘言で騙されたなんて全然出てこない」なんて言っているが、ここで言及している「捕虜尋問49号」には、「このような偽りの説明 を信じて、多くの女性が海外勤務に応募し、2、3百円の前渡金を受け取った。」と書かれているhttp://a777.ath.cx/ComfortWomen/proof_jp.html

偽りの説明 を」受けたという事は騙されたという事である。

一体、どんな読解力をしているのだろう?

③ 5:00~
アメリカが調査したから嘘はない」
おいおい。
さすが歴史素人。資料批判も知らないらしい。この資料は誰の供述かを書いていない。尋問は日系人によってなされたが日系人はある程度日本語はできても、韓国語は出来なかった。するとほとんどが日本人業者に聞いたものと思われる。だから「女性はわがまま」なんて言葉が出て来るのであろう。
そうするとこの資料は、業者の目線から書かれたものが多くあるに違いない。また米軍の捕虜となりおびえていた業者が多少なりとも自分に有利な話をした事も考えられるところである。

④ 6:00~
「8年間お金をもらってない。考えられますか、みなさん」と想像で述べている。

また「8年間お金をもらってない」という元慰安婦女性の証言を「兵士が払っていない」事にすり替えている。日本国内の遊郭でも業者は食費や被服費、生活費を膨大にとって、女性にはほとんどお金を払わないのがよくあることだった。ましてや監視の目がほとんど存在しない国外においては、やりたい放題だったであろう。もちろん比較的良心的な業者もいたであろうが。
遊郭・女郎屋の阿漕な渡世に対して無知すぎるのである。
女郎を取り巻く環境を「苦海」と呼んでいたのは、苦労が多くいくら働いても借金が返せなかったからである。また過労や性病で若くして死ぬ人も多かった。

③ 7:40~
(文玉珠さんの) 貯金額が2万6000円だと言っているが、これについてはすでにここに。



こうした間違いだらけの慰安婦論のパイオニアと言えるのが、中村粲であった。

(全敬称略)