幻のリー・パクド資料を巡る顛末記
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毎日新聞が幻のリー・パクド資料を見つけたという記事を出している。
(一部引用)
「慰安婦は身売りと認識」
尋問調書は、慰安婦問題に取り組むアジア女性基金が資料委員会を作り、1997年に米国で真相究明の調査をした際、捕虜の回答を発見した。回答はその後所在不明になったが、今年それが見つかり、資料委員会の委員だった浅野豊美・早稲田大教授(日本政治外交史)と毎日新聞が3月、さらに米軍の質問と関連の資料を発見した。
米軍は、朝鮮人捕虜約100人を尋問した後、3人を選び、米カリフォルニアにある秘密尋問センターに移送して、45年4月11日に改めて30項目の詳細な尋問を行ったと見られる。
調書は3人の捕虜と米軍の尋問者の名前を明記し、3人分の回答を一つにまとめている。「反日感情は約100人ともほぼ同じ」としながら、「(米国から見ると)日和見主義者が多い中、3人はまじめで信頼できる」と評している。
慰安婦については、日本軍の募集を知っているか、この制度に対する朝鮮人の態度はどんなものか、それで生じた騒乱や衝突を知っているか、が質問された。3人は「太平洋で目撃した朝鮮人慰安婦は、志願したか親に売られた者だった。(軍による)直接的な徴集があれば暴挙とみなされ、老若を問わず朝鮮人は蜂起するだろう」と答えた。
労務動員に関連しては、日本本土に送るのはどんな手続きか、徴用されたのか志願だったのか、家族と手紙のやりとりをできたか、が尋ねられた。3人は「朝鮮人は炭鉱、鉄鉱山の労働や飛行場の建設に従事し、常に鉱山の最も深く熱い場所で最悪の仕事を要求された。通信は許されたが、手紙は全て検閲を受けた」と語った。 (~略~)
まずこの資料だが、毎日が「資料を発見した」と述べているのは、一種の誤報であろう。
2015年2月27日付の『聯合ニュース』報道は、こんなだったという。↓
2015年2月27日付の『聯合ニュース』報道の一部を以下に翻訳しよう。国史編纂委員会(国編)とソウル大学校人権センターは、米国国立公文書記録管理局(NARA)とマッカーサー記念図書館にて調査・発掘した日本軍慰安婦関連資料のうち、日本軍捕虜尋問に関連する文献を27日公開した。これらの機関によれば、太平洋戦争期米軍は捕虜尋問を専門に担当する組織を地域または戦域別に置いた。連合軍翻訳通訳部局(ATIS)、東南アジア翻訳・尋問センター(SEATIC)、戦争情報局(OWI)、戦略諜報局(OSS)などでこれらの組織を運用した。米軍は捕虜のうち、技術・戦略的に重要な情報を持っていると判断される捕虜は、米国カリフォルニア州トレイシー基地に移送し、再尋問した。当時、米陸軍省が1945年4月4日、トレイシー基地に下達した「朝鮮人捕虜に対する特別尋問」(Special Questions for Korean PWs)文献からは、当時米軍が日帝の軍慰安婦強制動員の事実をすでに知っていたことが明らかになる。あわせて30の質問項目のうち、18番目の質問項目をみると、米軍は捕虜に「一般的に朝鮮人たちは日本軍が慰安婦として働くように朝鮮の少女たちを充員したことを知っていたのか?このプログラムに対する普通の朝鮮人の態度はいかなるものか?捕虜はこのプログラムのために発生した何らかの騒乱や抵抗を知っているのか?」という質問を朝鮮人捕虜にすることになっている。
いずれにせよ、平時と同じ身売り方式で女性集めが可能なら、植民地統治が崩壊しかねないリスクをはらむ「強制連行」に官憲が乗り出すはずはないと考えられる。それを裏書するのは、四十四年夏、テニアン島で米軍の捕虜になったリー・パクドら三人の朝鮮人による陳述である。「面長は自由選挙でえらばれた指導力のある実力派の老人」とか「労務動員を拒否すると投獄される」と語ったあと、朝鮮人慰安婦について次のように述べている。(10)
太平洋の戦場で会った朝鮮人慰安婦 (prostitutes) は、すべて志願者 (volunteer)か、両親に売られた者ばかりである。もし女性たちを強制動員 (direct conscription)すれば、老若問わず朝鮮人は憤怒して立ちあがり、どんな報復を受けようと日本人を殺すだろう。
(10) Composite Report on three Korean Navy Civilians List No. 78, dated 28 March 1945, "Special Questions on Koreans" (U.S. National Archives).
*付記)
3人は「太平洋で目撃した朝鮮人慰安婦は、志願したか親に売られた者だった。(軍による)直接的な徴集があれば暴挙とみなされ、老若を問わず朝鮮人は蜂起するだろう」と答えた。 http://mainichi.jp/articles/20160610/k00/00m/010/117000c
と今回の毎日は報じており、多少ニュアンスが異なっている。
秦が掲載したにも関わらず原典資料が存在せず、一部ネットユーザーの間では、資料の存在自体が疑問視されていた。
ところが、茂木弘道氏が探しても原典資料が見つからなかったらしく、言い訳を述べている。
「史実を発信する会」の茂木弘道氏から返事(Stiffmuscle氏続報)
だから、今回の発見で「それが見つかったのは良かった」という秦氏の感想は、本音だろうと思う。ホッとしたわけだ。
☆☆
資料としての価値はもちろんある。
だが「慰安婦」に関しては、自分で徴集に関わっていない人物による見解であり、想像で語っている部分も見られる。
対して「労務動員」に関しては体験者の言葉として語っており、かなり資料価値が高い。
毎日が報じた「労務動員」に関する部分
労務動員に関連しては、日本本土に送るのはどんな手続きか、徴用か志願か、家族と手紙のやりとりをできたか、が尋ねられた。3人は「朝鮮人は炭鉱、鉄鉱山の労働や飛行場の建設に従事し、常に鉱山の最も深く熱い場所で最悪の仕事を要求された。通信は許されたが、手紙は全て検閲を受けた」と語った。また機会があれば日本と戦うかと問われ、「日本に忠実な者も日本が戦争に負けると知ればたちまち態度を変えるだろう」と答えた箇所もあった。
米軍の尋問は、捕虜には戦争の行方が分からない時点に、圧力の少ない自由な空間で行われた価値のあるものだ。証言は朝鮮社会の底辺の認識をよく伝える。
捕虜たちは、拷問を含む強制労働の過酷さを語り、その待遇は連合国の捕虜より劣ると言い表した。
詳細は資料を取り寄せてみないと分からないが
☆☆☆
さて、これについては、かなり面妖なツイートが存在している。
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446件のリツイート
えっ あのテキサス親父が・・・?
対して
@kounodanwawoma1 @kohyu1952 おそらく「日本人捕虜尋問報告第49号」と勘違いしてるのでは
まあ、そういう事だろう。
西村幸祐氏は、2007年の安倍政権下で、あの(デタラメいっぱいの)『The facts』という意見広告を米紙『ワシントン・ポスト』(2007年6月14日付)に掲載したグループ「歴史事実委員会」の一人である。