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秦郁彦論説の嘘・デタラメ・捏造・歪曲・誤解(4) 「「海軍慰安所利用内規」について



読めば読むほど、デタラメを見つけてしまう著作がある。
確か鄭栄桓が、朴裕河の『帝国の慰安婦』について、そんな感想を述べていたがhttp://kscykscy.exblog.jp/25031090/、秦の慰安婦と戦場の性』も、同様である。

読み返す度に、新たな問題点、疑問点を発見してしまう。
資料に問題あることもあれば、論証に問題が見つかることもある。

金富子は、秦を「歴史修正のマエストロ」と評したが、なるほどその通りではなかろうか。


     海軍慰安所利用内規」の論証の問題点

さて、第12特別根拠地隊司令部が作成した「海軍慰安所利用内規」(昭20・3・18)という資料がある。

アジア女性基金>の資料ーつまり政府所収資料の中に入っている有名資料である。http://www.awf.or.jp/pdf/0051_3.pdfp479)

この中には、

 一 海軍慰安所の管理経営は海軍司令部に於てー括之を行ふ
 

と書いてある。
要するに、軍の造った内規の中に軍が直接慰安所を経営していた、と書いているのである。 実は、「軍の直接経営」を示す資料は、かなり多いのである。

しかし、日本軍の責任(国家責任)をできるだけ軽減したいらしい秦は、この理経営は海軍司令部に於てー括之を行ふ」と書いてあるこの資料まで文句をつけている。

こう書いているのだ。

「それによると「管理経営は海軍司令部に於てー括之を行ふ」とあるが、料金は業者に支払うようになっていた。民営か海軍直営とみなすかは微妙なところだ。」

  (慰安婦と戦場の性』 p117)
 

「管理経営は海軍司令部に於てー括之を行ふ」と書いていても、もしかして「民営」かもしれない というのだ。
その理由は 「料金は業者に支払うようになっていた」からである。

つまり、ここには「経営すればその利益は経営者が得るもの」という考え方が根底にあるのである。だから、お金が業者に行けば、それは「民営」の可能性もあるじゃないか、というのである。

しかし、これは「経営」という言葉に関する無知からきている。
「経営」とは、「目的のために組織を運営すること」である。デジタル大辞泉で調べてみても、それは必ずしも、営利目的の企業の経営を意味するものではなく、「事業目的を達成するために、継続的・計画的に意思決定を行って実行に移し、事業を管理・遂行すること。」としており、「国家の経営」なども含まれている。


デジタル大辞泉の解説

けい‐えい【経営】

[名](スル)
 事業目的を達成するために、継続的・計画的に意思決定を行って実行に移し、事業を管理・遂行すること。また、そのための組織体。「会社を 経営 する」
 政治や公的な行事などについて、その運営を計画し実行すること。「国家の 経営 」
 測量して、建物をつくること。
「十兵衛が辛苦―むなしからで、感応寺生雲塔いよいよ物の見事に出来上り」〈露伴五重塔
 物事の準備や人の接待などにつとめはげむこと。けいめい。
「湯を沸(わ)かすやら、粥(かゆ)を煮るやら、いろいろ―してくれたそうでございます」〈芥川・運〉
 急ぎあわてること。けいめい。
「早朝告げあり。―参入す」〈小右記・長保元年一一月〉
 

とすれば、ここでこの資料でのべた「経営」とは、「海軍司令部が、兵の慰安目的で慰安所運営したこと」を意味しており、その料金を誰が受け取ったとしても、「民営か海軍直営とみなすかは微妙なところ」・・・にはならない。
料金を誰が得たかは、経営主体を示さないのである。

こうしたことは些細なことである。しかし、秦の慰安婦論はこれまで多く指摘してきたように、様々な詭弁に満ちている。資料がくるっていたり、論証がくるっていたり様々である。

秦の本を読むのは実はかなり不快なのだが、今後も暇をみて、このデタラメいっぱいの著作物の問題点を指摘して行きたい。