河野談話を守る会のブログ2

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東京都が教材採用した副読本「江戸から東京へ」と「マッカーサー発言」の変な翻訳とでたらめな解釈 を調べてみました

              同じ靖国好き同士の馴れ合い質問



2006年5月の衆議院外務委員会で松原仁民主党議員が麻生太郎外務大臣(当時)に、「一九五一年のアメリカの上院軍事外交合同委員会でマッカーサー発言」について聞いた。

麻生は答えて言った。

「・・・・・・・ゼア・パーパス・ゼアフォー・イン・ゴーイング・ツー・ウオー・イズ・ラージリー・ディクテーテッド・バイ・セキュリティー、それがマッカーサーが上院外交軍事小委員会で証言した話でありまして、基本的には、要約すれば、彼らの戦争に入っていったパーパス、目的は、自衛のための部分が大きかったという表現になろうかと存じます。」



そこで松原は次のように述べた。

「・・・・・・大部分が安全保障の必要性に迫られて行ったと。それを初めからそう言ってくれればいいものを、五一年で確定してから、彼も政治家ですから言っているわけです。
 しかし、大事なことは、日本軍を追い出し、日本を占領したマッカーサーさんが言っていることは、日本は繊維業以外には固有の天然資源はほとんど何もない、そして、それらすべて一切がアジアの海域に存在していた。もしこれらの原材料を断たれたら、日本国内で一千万人から一千二百万人の失業者が出ていたでしょう。日本人はこれを恐れました。したがって、日本が戦争に突き進んでいった動機は、大部分が安全保障の必要性に迫られてのことであります。こういうふうなのが、マッカーサー元帥が一九五一年にアメリカの上院で発言した内容であります。・・・・」





麻生はsecurity」を.自衛」と翻訳し、松原は「安全保障」と翻訳している。

しかしどちらも及第点は無理だろう。

前後の文章とつながらないからだ。


問題となる文章は、
They feared that if those supplies were cut off, there would be 10 to 12 million people unoccupied in Japan. Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.



であり、推奨できる翻訳は

「日本は、資源の供給を絶たれることにより、1,000万から1,200万の失業者が発生することを危惧した。日本が戦争に飛び込んでいった動機は、大部分がその脅威から逃れる必要に迫られてのことだった」


である。

security」を「その脅威から逃れる必要」とここでは訳しているが、これなら前の文章からの意味が通じる。

しかし「自衛のための部分が大きかった」とか「安全保障のためだった」などと翻訳してしまうと、文章全体が日本語としておかしくなる。「日本は、資源の供給を絶たれることにより、1,000万から1,200万の失業者が発生することを危惧した。日本が戦争に飛び込んでいった動機は、自衛のための部分が大きかった」となる訳だが、これでは失業者が発生することを危惧」という前文と「自衛のため」が繋がっていないのだ


ゆえにジャーナリストの西川重則は有事法制下の靖国神社(P149)で以下のように書いて疑問を呈している。
(securityは)・・・辞書では、安全保障と翻訳される場合もあるが、この場合時事英語として、国連の安全保障理事会とか国連軍とかに使われる。日常的には安全とか安心という意味で使われる。・・・・(以下略)・・・・・マッカーサーの帰国報告の1節を、日本の戦争目的は「自衛のための部分が大きかった」と麻生大臣が翻訳しているのは不十分・不正確である。日本は事変や自衛の名の下で侵略戦争を行ったのであり、マッカーサーがsecurity(安全保障)と言ったから「自衛のために戦った」というのは、歴史の事実として不正確である。」



ブログでは【美しい壺日記】さんが翻訳をもう少し上手くまとめてくれている。

ちと長いですが、最後に証言の前後の部分の紹介をしときます

なお、青字が正解で、赤字が歴史修正主義者による誤訳捏造です


【対訳 マッカーサー証言、1951年5月3日、米上院軍事外交合同委員会で語った内容】
(英語原文 正論)
http://www.sankei.co.jp/seiron/koukoku/2005/maca/mac-top.html

[ヒッケンルーパー上院議員]
では五番目の質問です。赤化支那中共:共産中国)に対し海と空とから封鎖してしまへといふ貴官(マッカーサーの事)の提案は、アメリカが太平洋において日本に対する勝利を収めた際のそれと同じ戦略なのではありませんか。


[マッカーサー]
はい。 太平洋では、私たちは彼らを迂回し包囲しました。日本は八千万に近い膨大な人口を抱え、それが4つの島に犇いているのだということを理解して頂かなくてはなりません。その半分近くが農業人口で、あとの半分が工業生産に従事していました。 
潜在的に、日本の擁する労働力は、量的にも質的にも、私がこれまでに接した何れにも劣らぬ優秀なものです。 
歴史上のどの時点においてか、日本の労働者は、人間が怠けているときよりも、働き、生産しているときの方がより幸福なのだと言うこと、つまり労働の尊厳と呼んでも良いようなものを発見していたのです。 
これまで巨大な労働力を持っていると言う事は、彼らには何か働く為の材料が必要だと言う事を意味します。彼らは工場を建設し、労働力を有していました。しかし彼らは手を加えるべき材料を得ることが出来ませんでした。

日本原産の動植物は、蚕をのぞいてはほとんどないも同然である。綿がない、羊毛がない、石油の産出がない、錫(すず)がない、ゴムがない、他にもないものばかりだった。その全てがアジアの海域に存在したのである。もしこれらの原料の供給を断ち切られたら、一千万から一千二百万の失業者が日本で発生するであろうことを彼らは恐れた。 

したがって彼らが戦争に飛び込んでいった動機は、大部分がその脅威から逃れる必要に迫られてのことだったのです。

したがって彼らが戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が失業者対策(保護)に迫られてのことだったす。

したがって彼らが戦争に飛び込んで行った動機は、大部分が安全保障の必要に迫られてのことだったのです。

原料は、日本の製造業のために原料を供給した国々マレーシア、インドネシア、フィリピンのような国々の全拠点を、日本は、準備して急襲した利点を生かして抑えていた。そして彼等の戦略的概念とは、太平洋の島々、遠く離れたところにある要塞をも維持することだった。だから我々が、こうした島々を再び征服しようとすれば、我が軍の財産を搾り取られ、日本が攻略した地の基本的な産品を彼等が管理する事を許す条約に最終的には不本意ながら従うことになり、犠牲があまりにも大きいと思われた。 

この事態に直面して、我々は全くの新戦略を考え出した。日本がある一定の要塞を確保したのを見て我が軍が行ったことは、こうした要塞を巧みに避けて回り込むことだった。彼等の背後に回り、日本が攻略した国々から日本へ到達する連絡路につねに接近しながら、そっと、そっと忍び寄った。米海軍がフィリピンと沖縄を奪う頃には、海上封鎖も可能となった。そのために、日本陸軍を維持する供給は、次第に届かなくなった。封鎖したとたん、日本の敗北は決定的となった。 
終結果を見ると、日本が降伏したとき、少なくとも三百万人のかなり優秀な地上軍兵士が軍事物資がなく武器を横たえた。そして我が軍が攻撃しようとした要所に結集する力はなかった。我が軍は(迂回して)彼等がいない地点を攻撃し、結果として、あの優秀な陸軍は賢明にも降伏した。(以下略) 



[goo 英和辞書]
「se・cu・ri・ty 」
http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=security&search_history=&kind=ej&kwassist=0&ej.x=29&ej.y=8&mode=0
━━ n. 安全 *1; 安心; 〔古〕 油断; 確実; 保護, 保安; 防衛(策) *2; 【コンピュータ】安全保護 *3; 保証(金・人); 担保(品); 借用証 *4; (pl.) 証券, 証書, 債券.」

ちなみに自衛なら“self-defense”だそうです




         自衛戦争証言である」という宣伝


産経及び『正論』誌はこれが「自衛戦争証言である」と宣伝している。

『正論】誌解説の牛田久美は、 

・・・・「原料の供給を断ち切られたら、一千万人から一千二百万人の失業者が日本で発生するだろうことを彼らは恐れた。したがって、日本が戦争に駆り立てられた動機は、大部分が安全保障の必要に迫られてのことだったのだ」
 いわゆる自衛戦争証言である。・・・・・(略)・・・





どの辺が自衛戦争証言なのか?さっぱり分からないのだが?

さらに「朝鮮と満州の敵勢力を掃討して日本を防衛する。マ元帥のこの行動は、日本が戦前、独立を保つためにとった行動そのものだった。、朝鮮の地に自ら降り立ち、大陸からの中ソの脅威に直接立ち向かってはじめて、極東における日本の地政学的位置を痛感し、戦前の日本がおかれた立場を理解したのである。」という解説をしているが、この解説はただの想像であり、「日本の地政学的位置を痛感し」などとは言えない。

「(アメリカは)ハワイ王国を併合し、こちらは現住民族を滅ぼした」と書いているが、王国は滅びたが現住民族は滅びてはいないだろう。
サンケイ・『正論』の書くことはどうもよく分からない。




               歴史のお勉強



さて歴史を少しおさらいしよう。


経済面からの当時の状況の説明

第一次世界大戦の時、戦争バブルに沸いた日本経済だったが大戦が終わると長い不況がおとずれる。やがて関東大震災、金融恐慌、1930年前後の世界恐慌が起こり、日本中を失業者の群れが生まれ未曾有の不況に突入した。同時期大凶作が起こり、東北や北海道では娘の身売りが相次いだ。
その頃の日本の地主達は、小作料として5割以上取っていたし、工場労働者は安い賃金でしばしば道具のように扱われていた。小林多喜二の「蟹工船」の世界や「たこ部屋」が存在していた時代である。
こういう点でも貧乏人イジメの安倍政権は古い時代に重なって見える。)

政府は、治安維持法などの弾圧立法によって、小作争議や労働争議をことごとく弾圧した。こうした状況の中で、古くからの願望であった領土拡大論が力を帯びて来る。対中国強硬論である。
日本の農民や労働者をどんそこに突き落としたのは、あきらかに地主制度であったり、資本家に有利な労働法制であり、当時の貧富の差は激しかったが、それを顧みず「日本の問題は領土がせまいからである」というのだ。だから領土を広げれば、貧しい労働者や農民を救う事ができるのだという幻想を持った軍人や右翼がテロを起こし始めた。こうして領土拡張戦争が起こるようになるのである。「満州は日本の生命線である」という宣伝がなされ、満州への移民が推奨された。

この領土拡張は、19世紀初頭の佐藤信淵の時代から唱えられていた世界(アジア)征服の野望の実現でもあった。


中国への侵略の結果、米国などと激しくぶつかるようになり、侵略を止めさせるために経済封鎖がなされた。そしていよいよ追い詰められた日本は太平洋戦争にうって出たのだ。

このあたりがマッカーサー発言の内容になるだろう。

さて、「だから中国もあまり経済的においつめないようにしようじゃないか」というのがマッカーサー発言の意図である。

というわけで1941年太平洋戦争に突入した経済的な観点からは、マッカーサーが述べたように、日本は、資源の供給を絶たれることにより、1,000万から1,200万の失業者が発生することを危惧した。日本が戦争に飛び込んでいった動機は、大部分がその脅威から逃れる必要に迫られてのことだった」とその経由述べてもそれほどの間違いではない。
しかし、完全に正解でもないだろうと思う。

もちろん、戦争は経済的な原因によってのみ引き起こされる訳ではないのは当たり前である。
マッカーサーは、黒船が来る前の時代から、すでに日本の国粋主義者の間に世界侵略の野望が芽生えていた事を知らなかったのである。そして「日本人は天孫民族であり、世界を支配すべき民族である」という妄想の中で、その野望が形を変えながらふくれあがりほとんど精神医学的な狂気の中で、国内の良心と理性を破壊し太平洋戦争へと突入したのである。




          ウヨクは意味が通じなくても自分好みの誤訳が好きだ




さてこれを2013年、中山成彬議員が再び国会で取り上げている。




この国会答弁の中で、中山なりあきもやはり「安全保障の必要に迫られてのことだった」と翻訳しているが、これで意味が通じると思っているのだろうか?

しかも「明確に侵略戦争を否定している」とまで述べている。

衆 - 予算委員会 - 10号 
平成25年03月08日


中山成彬

・・・・・・・
もう時間が少なくなりましたけれども、さきの戦争は侵略戦争だった、こういうふうに私たちは思い込まされていますが、一九五一年、昭和二十六年ですけれども、GHQの総司令官であり東京裁判を主宰したダグラス・マッカーサーは、米国議会の上院の軍事外交委員会におきまして、第二次世界大戦について、日本は米国によって閉じ込められ、資源供給の道を断たれた、日本が戦争を始めた目的は主として安全保障の必要に迫られてのことだった、こういうふうに明確に侵略戦争を否定しているんですよ。今の東京は、石原前都知事の指令で、このマッカーサーの発言を副読本として使っているんですね。
 期待される下村文科大臣、どうですか。これを全国の公立学校に副読本として配付したらどうですか。


○下村国務大臣 御指摘の江戸から東京へ、私も、先生から御質問があるということで、きょう、手に入れさせていただきました。東京都教育委員会が独自教材として作成されているものでございます。
 このような地域で作成した教材のうちすぐれたものについて、ほかの地域においても活用されるということは大変有意義だというふうに考えます。このため、文部科学省として、各都道府県教育委員会などの担当者を集めた会議などを通じて情報の共有化を図ってまいりたいと思いますし、都道府県で使われている副教材ですばらしいものについてはぜひ全国で共有化されるように、文部科学省としても働きかけをしてまいりたいと思います。


驚いた事に、東京都の教材「江戸から東京へ」の中にこれまで論じて来たよう誤訳がそのまま使われているというので、さっそく調べてみた。



【東京都の教材「江戸から東京へ」25年度版】P125


連合国軍最高司令官であったマッカーサーは戦後のアメリカ議会において、日本が開戦したことについてin going to war was largely dictated by securityと証言しており、この戦争を日本が安全上の必要に迫られて起こしたと捉える意見もある。






石原慎太郎都知事は 『検証・靖国問題とは何か PHP研究所編』の中で、
朝鮮戦争時、国連軍(アメリカ軍)の司令官を解任されたマッカーサーは、アメリカ上院軍事合同外交委員会で、日本の大東亜戦争の動機について、東京裁判を押し付けた当事者であるにもかかわらず、「大部分が安全保障上の必要に迫られてのことだった」と証言しています。

と述べているので、その考えに基づいて、副読本にしたらしい。

こうして、「この戦争を日本が安全保障上の必要に迫られてのことだったと捉える意見もある。」と書く以上、

当然両論併記で、侵略戦争と捉える意見もある」と書いてあるんだろうな?

というよりも、村山以来の歴代内閣は、「村山談話」を踏襲し、小泉談話などでも「侵略」は明記されており、子供にもそう教えるのが当たり前である。もしそうしないなら、口先だけの謝罪であったと非難されても文句は言えないのである。

安倍政権はちゃんと答えるべきだ。いや、この場合、文句をいうべきなのは東京都なのかも知れないが、今後文部大臣の権限が強化され検定が厳しくなるらしく、「副教材ですばらしいものについてはぜひ全国で共有化されるように、文部科学省としても働きかけをしてまいりたい」と上文でも述べているのでぜひ下村文相を追及して欲しいものだ。まさか、文部大臣の権限で「侵略」と書かないという事になると今後、米国を含めて大問題になるよ。安倍が靖国参拝したことで「虎の尾を踏んだ」のだ。



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*3:無断でデータにアクセスできないようにすること

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