西岡力の「韓国・北朝鮮」「労務動員」に関する論説を概観する
2017年の 『ゆすり、たかりの国家』では
など・・何言ってんのレベルの言葉が並ぶ。
西岡のこうした言説は、ただの北朝鮮・韓国パッシングではない。
もう政治扇動家というしかないが、この人、安倍5人組の一人であり、安倍に徴用工のことを「労働者」と言わしめた人物である。
きわめて政権に近い人物が、「対立扇動家」であるということが我が国の不幸である。
★★
疑似歴史学会というべきものだが、<顧問>に歴史学者の伊藤隆がいる。ただし名前があるだけで何一つ論文を書いていない。「新しい歴史教科書をつくる会」を高評価した博士論文を書いたばかりの長谷亮介の名前にも<事務局次長>という肩書がついている。
後は日本会議関係人物が並んでいる。
<事務局次長>長谷亮介
<顧問>櫻井よしこ:ジャーナリスト
実はこの二つの史料は、西岡の論文・著作の定番で、
『日韓歴史問題の真実』2005
『朝日新聞「日本人への大罪』2014
『正論』2019-3増刊「歴史戦 虚言の韓国 捏造の中国」
『歴史を捏造する反日国家・韓国』2019
でも、使われている。
文章もほとんど同じなのだが、『日韓歴史問題の真実』『朝日新聞「日本人への大罪』『正論』2019-3増刊「歴史戦 虚言の韓国 捏造の中国」では、「逃亡セル集団移入半島徴用工員の諸行動に関する件』の「金山正損の手記」の引用元を『在日朝鮮人関係資料集成第4巻』にしていた。
正しくは「第5巻」である。昔読んだ時には、随分雑な資料の扱いをする人だな、と思ったが、『歴史認識問題研究』(2018114)では訂正されている。そこだけが進化というものだろう。
しかし、同じ事ばかり書いていて、よく読者は怒らないものだ。
★★★
資料解説も杜撰である。
西岡は「金山正損の手記」を「朝鮮人徴用工の姿をよく示す資料」で、「高賃金、軽労働の飯場生活」などの見出しを立て、これを根拠に「「反日日本人」は、実態を知らないでやみくもに日本批判を展開する韓国の主張を根拠として日本批判を展開する。歴史を歪め日韓の真の友好を妨げている元凶というべきだ」などと主張している。(歴史認識問題研究』3号)
もう一つの鄭 忠海『朝鮮人徴用工の手記』の方は、職場恋愛をしたり、職場の近くに海が近くにあり海の幸をとって宴会したことが好待遇の根拠のように述べているが、職場恋愛の話も海の幸の話も偶発的な出来事である。また不倫関係を誘うのが日本女性であり、しかし親しくしていた本人を誘うのではなく、本人の友人(朝鮮人)に打ち明け、仲介を依頼する、さらに別れるときも特にモメて愁嘆場を演じることなく簡単であり、どうもリアリティの乏しい話が続く。「夜出歩くのが自由だった」という話もこの著作にしか存在しない話である。
一つの歴史事象について、できるだけ多くの歴史資料を集め、資料批判をして使うのが歴史学的探究法だが、2つの資料だけを繰り返し使うのはただの政治プロパガンダに過ぎない。他人に「実態を知らない」などと嘯くのは、もう少し広範囲に探究してからしたらどうなのか。
*注 (西岡は櫻井よしこらの国家基本問題研究所研企画委員兼研究員でもある)