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「記事を書く」事を「ご注進」と書く『週刊ポスト』の朝日攻撃



すでに日本のメディアは、狂ってしまったようだ。

もっとも狂った雑誌と言えば『週刊ポスト』であろう。3月16日号P40~P43では、朝日攻撃に血道をあげ「ご注進」と書いている。

何を「ご注進」なのか?その具体的な内容を知ろうと読んでみても、よく分からない。朝日新聞が、韓国や中国、米国に「ご注進した」というのだが、朝日の記者が各国政府や各国の新聞に何かを通報した・・・・とかいう具体的な内容は何もなく、ただ「記事を書いた事」がご注進」になるらしい。

「記事を書いた事」=ご注進」?
変な日本語の使い方もあったものだ。

つまり、「麻生ナチス発言」や「橋下発言」を朝日が書いたので世界の人々がそれを知ることになった。それを「ご注進」と呼んでいるらしいのだ。
へたくそなレトリックである。

実はこれを書いている私もこのポストの記事がよく分からない。なんせ日本語を知らない人間が記事を書いているらしいので読みとるのは難儀である。カルト言語を読んでいるみたいだ。
都合が悪いから「敗戦」を「終戦」と言い換えてしまう、あの系統の言霊変換なのだろうか?
いづれにせよ普通我々は「記事を書く事」を「ご注進」とは言わないのだという事を誰か『週刊ポスト』編集部に教えてやってくれないだろうか?

「麻生発言」を朝日が書いたので、AP通信や英ガーディアン紙、米IPタイムズ、CNNニュースなどが取り上げたというのだが、それがどうしたんだろうか?
「書いてはいけない」といいたいのだろうか?

「橋下発言」もまた朝日が書いたから世界中が知ったというのだが、これも「ご注進」でも何でもない。ただの報道である。

「麻生発言」にしろ「橋下発言」にしろ、それを伝えた報道が問題ではなく、発言した本人が問題である。当たり前だと思うが。
そこを問題にしないという事は、麻生や橋下と同じ思想のお仲間なのだろう。

しかし『週刊ポスト』編集部の歴史妄想論者は、これを書いたのが朝日の「ご注進体質」だと批判する。そしてこんなことを書いている。

「・・・しかし繰り返すが慰安婦問題が大きな国際問題に発展したのは朝日の誤報がきっかけである。朝日はアメリカという「虎の威」を借りて、慰安婦問題を規制事実化しようとしているとしか見えない。」
(ここには(注)がついていて、「作家?秦郁彦の検証・・・・」などと書いている。やれやれ)

おお、正体を現したという感じである。

まだ、こんなことを信じている人間がいる訳だ。
秦郁彦西岡力あたりを読んで「自慰史観」に染まるとこうなる見本みたいな意見である。
右派論壇からネトウヨに共有されている慰安婦問題ストーリーが、この「朝日の誤報慰安婦問題を大きな国際問題に発展させた」という物語である。この物語の中では、「朝日新聞」や「吉田清治」が大き過ぎる比重を占めているようだ。もちろん朝日はそれなりに大きな役割を果たしているが、もっとも大きな衝撃を我々に与えたのは、金学順さんが名乗り出た事だった。吉見教授も金さんの記者会見を見て研究を始めたのである。
それまでの慰安婦問題はいわば、実証研究以前の期間だった。朝日や読売が吉田清治について書いていたが、それほど注目を浴びていた訳ではない。この期間を「プレ慰安婦問題実証研究期間」とこのブログでは名づけている。

ところが金学順さんが名乗り出た結果、次々と名乗り出る人達が現れ、慰安婦問題は戦後補償の中心問題となると共に、統計処理が始まり歴史学の実証研究対象にもなったのだ。
明らかに、金学順さんが名乗り出た事が、一つの大きな節目であった事が分かる。
と同時に、吉田清治は表舞台から去ったのである。こうして「プレ実証研究時代」は終わった。

「強制連行」という言葉については本ブログで調査・発表しているように、1993年まで「朝鮮半島では7,8割は強制連行に近い」とか「半強制的に」とか書いていたのは、秦郁彦である。
近現代専門の歴史学者がそんな風に書いているのだから、専門家でも何でもない朝日新聞あたりが、「強制連行」とか書いたとしても、しかたがない話である。なんせ秦郁彦と言えば、元大蔵官僚であり、ハーバードで学び、プリンストンで教え・・・から始まるやたら長い肩書を持った近現代専門の歴史家である。
朝日の責任を問う前に、歴史家秦郁彦の責任を問うべきである。

さらに「強制連行」の定義の中には、「詐欺・詐称による拉致」が入っているので「強制連行(強制動員)があった」と書いてもそれ自体何の問題もないのである。慰安婦の動員に詐欺が山のようにあった事はすでに立証されているのである。

最後に『週刊ポスト』は、ネット右翼たちの捏造言論を引用してこう結んでいる。

「ネット上では・・・「煙のないところに火をつける」と揶揄されている朝日新聞だが、そろそろ読者も気づきはじめている・・・」

あはは・・という感じだが、週刊ポスト』の読者もそろそろ気づきはじめている頃である。
週刊ポスト』がいつの間にか、ネトウヨ化している事を。
ネトウヨと同じ「歴史修正主義物語り」の理屈で、同じようなレトリックを使っている。

ところでこの記事。誰が書いたの?