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第8回吉見裁判参加記(1)



やっと梅雨が明けたと思ったら、いきなりうだるような暑さが到来。この日東京は最高気温34度を記録した。2時間近くかけて電車に乗ったり降りたりで何度か汗をかいてはひくを繰り返しながらやっと東京地裁に到着。吉見裁判第8回口頭弁論を観戦した。この日並んでいたのは、200名ほどだろうか。入れる確立はほぼ1/2。幸いなことに当たり番号だった。実はクジ運が悪く、宝くじを買っても、300円以上に当たったことは無いという稀有な悪運なのだ。しかしなぜかこの手の裁判の抽選だけはほとんど外れた事が無い。並びながら知った顔を探しだすのに苦労するほどこの日は、桜内応援の方々が多かった。参加者の一人は、『拉致と●●』という題名の雑誌を扇替りにパタパタさせていた。無事入場。TVカメラが入っていた。残念ながら最前列の席を逃しましたので、定石通りに最後尾の席に陣取った。最前列は裁判の様子がよく分かるという長所があり、最後尾は裁判に集まる人の様子がよく分かるという長所が有る。ただし最後尾は、時折答弁の声が聞こえないことがあるので後で前の方に座った人にあれこれ聞く必要があるのが難点。この日も一部の答弁が聞こえなくて、後で照合しなければならなくなった。

一番聞きとりつらかったのは、吉見氏への尋問の最後の方だった。被告側尋問がやたらだらだらと長引き30分は延長していたのではないだろうか?尋問担当は「新しい歴史教科書を造る会」の高池弁護士とよせばいいのにまたもや被告である桜内氏本人が担当していた。それから知らない弁護士も何か無意味なことを聞いていた。桜内氏は案の定、定番の演説を始めてしまい原告代理人(弁護士)から「質問してください」と注意を受ける。前回の阿部参考人への尋問も、長々と演説をしては同じ注意をされていたが、自己主張が強いのが政治家の常とは言え、どうやら誰かの話を聞くのは嫌手なようだ。この日は吉見氏に「4つの要件=●居住の自由がない● 外出の自由が無い●廃業の自由●接客拒否の自由=は、その全てが無いと性奴隷なのか?」と聞いていた。これに対して吉見氏は(聞こえなかったので後で弁護士に照合したのだが)「●廃業の自由●接客拒否の自由」がとくに重要だ」と答えていた。この辺りはいずれは裁判所の調書を取り寄せて確認するつもりだが、その後桜内さんは「何パーセント?」とか聞いたりしたようだ。人間の自由意思を数字に換算したいのだろうか?そんなことが可能なら裁判は不要である。奴隷制に当てはまるかどうかが、常に裁判になるのは前回参考人として証言した阿部教授が述べたとおりだろうが、どうやら桜内さんは聞いていなかったらしい。パーセンテージになる訳がない。何で自由意思を数字化するという発想をするのかさえよくは分からない。

後で吉見氏にこの点について聞くと、「もっとも重要なのは廃業の自由」と言っていた。それは例えばこういうことである。もし居住の自由も 外出の自由も接客拒否の自由も無くても、もし慰安婦にされた人が「こんな仕事をやっておれません。今日で辞めさせていただきます」と言って自由に辞めることができたなら、それは性奴隷制度とは言い難いだろう。ところが、酷い扱いをされ「辞めたい」と思っても辞めさせてもらえないならどうだろうか?問題はこの「辞めたい」と思っても辞められない皇軍慰安所を日本軍が造ったという事なのである。

そして、この日本軍が造った奴隷制のような皇軍慰安所制度を、「業者の責任だ」と言逃れをしているのが、この日被告側の証人として立った秦郁彦氏である。話を秦氏の答弁に移そう。

この裁判に秦氏が登場するのは、場違いである。裁判の要点は吉見氏が捏造したか否かであり、「吉見は(性奴隷には当てはまらないと)知っていながら、性奴隷説を唱えた」桜内被告は主張している。そこで、被告はこれを証明しなければならない。が、証明はどう見ても不可能だろう。そこで目先を替え、「性奴隷かどうか?」という学説論争にしようとしている。
こうして秦氏を持ち出して、その学説(?と言えるかどうか)を開陳させたわけだが、元々裁判は学術論争の場ではない。現代の裁判所は魔女狩りの場ではないのだ。裁判官がある学説と別の学説の優劣を判定することなどできやしない。そういう場ではないのだ。なので最初から場違いな秦氏の登場だった。それでもこの二人が並んで、宣誓するシーンは「ライバル日本史」なのだろう。いやこの場合「ライバル日本史家」か。しかし始まるや否や秦氏の衰えは隠せなかった。いつものワンパターンの話。それから「分からない」「知りません」を何度聞いただろうか?特に最後の部分には失笑が起こっていた。何て言ったのかは知らない。質疑を終えた後に何か言ったのである。

さて順番に追ってみよう。ただし録音したわけではないし(裁判は録音不可能)、速記も不完全なのでうろ覚えの部分もある。詳しくは裁判所の調書を見てからだ。

      ①秦質疑を簡単に追う

宣誓が終わるとまず、桜内被告の代理人である田中弁護士の尋問が始まった。(乙28号証)を示して田中弁護士に誘導され、秦氏はかつての吉見氏との関係を陳述する。(乙28号証)というのは秦氏が裁判所に提出した意見陳述書である。
手元に乙28号証)のコピーがあるのだが、残念ながら著作権秦氏にあり、公開することができない。秦の印鑑が押されているが、内容はチャチい。これには、「(慰安婦)女性たちは平均して兵士たちの数十倍、軍司令官級の高収入」とまるで事実無根なことが書かれていたりする。一体どうやって平均が分かったのか?それを秦氏はどうやって証明できるのか?まるで不明である。こうしたデタラメを追及するのが、原告(吉見)側代理人の使命だが、今はまだ被告代理人による”お仲間尋問”の最中である。
秦氏が裁判所に提出した意見陳述書(乙28号証)の中で参考文献とされているのが、慰安婦と戦場の性』であり、代理人たちが(乙6号証)と言っていたのがこの著作物である。以後、できるだけ慰安婦と戦場の性』(乙6号証)と書くが、場合によっては、省略して(乙6号証)とのみ書くのでご了承いただきたい。
田中弁護士が誘導したのは慰安婦と戦場の性』の冒頭に書いてある部分である。そしてこの部分はまさに吉見氏自身が、「そんなことを言うはずもない事であり、会ってさえいない」とはっきりと否定している部分なのだ。それが「良心に従って真実を述べ・・・・・」と宣誓した2分後のことであった。秦氏は「よく覚えておりませんが」と前置きをしながら、例のキナくさい話を語り始めた。

   (続く)




*注)
吉見説 「日本軍慰安婦制度の下では、少なくとも4つの自由が認められていなかった」


慰安婦と戦場の性』(乙6号証)に書かれる嘘・デタラメ