河野談話を守る会のブログ2

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【少女2】 石川逸子さんの詩



慰安婦の本も書いていた詩人石川逸子さんが残した詩です。読んでいて苦い。


  石川逸子 『詩集  ゆれる木槿花神社 』  1991年


            少女2 
                  

ふるさとは
もうそこに見えかかっていたのに

オンマー(お母さん)
イジェト ラ ワッソ ヨ (帰って来たよ)
と叫べば走り出て
抱きしめてくれる
母に どんなにか会いたいのに

幼い日 無邪気に遊んだ
スミレ咲く河原を
思い切り かけたいのに

柿の木の枝から枝へ 飛ぶカンチの姿
真っ赤なとうがらし畑
ひとめ 見たいのに

チマ・チョゴリをひるがえし
桃の精のように踊ってみたいのに
今頃は故郷へきっと戻られていようと想う方と
ああ 結ばれるのが希みだったのに

その故郷へとひた走る船の舳先から
身を投げ
深く 深く 沈んでいった少女ー

あなたの名は知らず
ただ従軍慰安婦であったと

あなたを辱めた 私の国の男たちは
大日本帝国の男たちは
肩章を外し 軍刀も外し
さりげなく日本の町や村のなかにまぎれこんでいってしまったのに
今頃は戦友会で
なつかしくて軍歌放吟するとかいうのに
まだ帰れないあなたは
十代の少女のままのあなたは
いま どこの海底で
永劫の かなしみの花 開かせているかしら

みつけなければ
みつけなければ
その花を
血のいろのその花を みつけなければ