河野談話を守る会のブログ2

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出身地の古老、隣人、警察官、業者、なじみの客の姓名を言わないのは不自然か?




知人の年配者に、中学、高校時代の担任教師の姓名を覚えているか?聞いてみた。3人に聞いてみて、2人はまったく覚えておらず、一人だけが2人の教師の姓を言えたが、フルネームではなく「確か、こういう名前」という言い回しだった。多分、後年にクラス会で再会したとか、友人との対話で話題に出たとかで記憶の幅も違うとは思うが、当時は毎日のように会っていた教師の姓名さえ、我々は大抵は忘れているものである。私自身も、すでに40年も昔にお世話になった教師の顔は浮かぶのだが姓名はまったく思いだせない。ためしに20代後半の若者にも聞いてみたが覚えていないという。「まだ卒業して10年くらいでしょ。担任教師の姓名を誰か一人くらい覚えているのでは?」と聞いてもやっぱりまったく覚えていないという。記憶力とはその程度ではないだろうか?
もちろん、卒業アルバムでも見れば思いだせるだろうが、戦地にはそんなものは有りはしない。
平和な世の中で10年程度でも、綺麗さっぱり忘れていることがあるのに、ましてや50年も前に戦地で会った人の姓名を正確に覚えておられるはずが無いのである。

ところがこれに文句をつけている人がいる。

秦郁彦という名の歴史家で、「金という男」という言い回しさえ攻撃対象になっている。
こう書いている。


「動員方法」の中で、13件を占めるB就業詐欺の場合、甘言でだました犯人はほぼ全員が顔見知りの朝鮮人かと思われるが、実名は出て来ない。「日本人の手先として働いていた50代ぐらいの男」「金という男」(韓国では人口の4割が金姓といわれる)とぼかしてあるのは、「証言者が意図的に事実を歪曲しているケース」に配慮したためなのか。」
慰安婦と戦場の性』p190)

「50代ぐらいの男」とか「金という男」とかいう表現がご不満らしい。

秦郁彦は別の個所でも、こう書いている。

それでも親兄弟、出身地の古老、隣人、警察官、業者、なじみの客の姓名、部隊名などが分かれば追跡調査も可能だが、それも不自然なほど明らかでない例がほとんどである。
慰安婦と戦場の性』 p178)


何が「不自然なほど明らかでない」なのか、さっぱり分からない。

慰安婦問題が浮上し、各国の被害者たちが名乗りを挙げたのは、戦後46年を経た後であった。大抵の元慰安婦は、60代後半から70代にさしかかっていた。彼女たちは50年も前に起こった出来事を手さぐりするように思い出そうとしていたのである。その記憶は断片的であり、PTSD(心的外傷後ストレス障害によって歪まされていたが、その朴訥な語りかけは確かに世界中の人々の心を打ったのである。

ところが、日本のウヨクさんたちは、韓国の慰安婦被害者の人達の記憶に文句があるらしい。正確な記憶ではないから・・・ということのようだ。しかし、記憶が正確でないのは当たり前である。そして起こった出来事は情景として浮かぶにしても、姓名はなかなか出て来ないだろう。姓名なんて覚えている方が不思議なくらいである。
というより、戦地の慰安所で自分のフルネームを告げたりするだろうか?



①親兄弟の姓名
親兄弟の姓名を詳しく言わないのは当たり前である。「慰安婦」体験を家族の恥として考え、カミングアウトを快く思わない家族・親族が多い中でその名前を告げたりしなければならないのだろうか?
親兄妹の実名を述べれば、迷惑をかけるかも知れないではないか?

②出身地の古老、隣人の姓名
自分の例で恐縮だが、私は18歳まで暮らしていた2000人足らずの田舎の町の町長が誰だったかをまったく知らない。隣の家に住んでいたご老人の1人の姓はおぼろげに覚えているが、名前は記憶にない。はす向かいにもご老人が住んでいたし、しばしばお茶とお菓子を御馳走になったにも関わらず、まるで姓名を覚えていない。
50年前の古老の姓名を覚えていないというのは、そんなに不自然なのだろうか?

③警察官の姓名
50年前の警察官の姓名なんて覚えている人がいるのだろうか?
よっぽどお世話にならない限り覚えていないだろう。ちなみに私はこれまでの人生で警察官の名前を一人も記憶していない。

④ 業者の姓名
業者の姓の方は元慰安婦の証言にしばしば出てくる。
例えば宋神道さんは「コウ」という名前をあげている。帳簿をつけていたのは「サイ」で、最初に診察した軍医は橋本少尉である。
帰国する際にはイチカワという名前の兵隊がいたという。
『オレの心はまけてない』
フルネームはちょっと無理だろう。本名かどうかさえ分からない上に
だいたい騙して連れて来て、将兵に強姦(水揚げ)させて泣いている女性に自分のフルネームを言ったりするだろうか?


⑤ なじみの客の姓名、部隊名
50年前の客の姓名、部隊名を記憶すると思っているのだろうか?
兵士は自分の本名と部隊名を告げてから、ことに及ぶ習慣など存在していないのになぜ知っているはずだと思うのだろうか?
もちろん、文玉珠さんのように、日本語が最初から達者であれば、情報にも目ざといだろうから、部隊名くらいは知っていて当然だがたいていはそうではなかった。



この慰安婦と戦場の性』という著作には逆に徹底した検証が必要であろうと思われる。慰安婦の証言を検証すると称する側の偽りと詭弁の方が気にかかるのである。