河野談話を守る会のブログ2

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バタビア資料のたどった運命









1993年8月。河野談話の前に政府が集めた資料の中にはバタビア臨時軍法会議の記録」がありました。

この資料には「ジャワ島セラマンほかの抑留所に収容中であったオランダ人女性らを慰安婦として使う計画の立案と実現に協力したものであるが、慰安所開設後(一九四四年二月末ころ)、「一九四四年二月末ころから同年四月までの間、部下の軍人や民間人が上記女性らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどしたような戦争犯罪行為を知り又は知り得たにもかかわらずこれを黙認した」などの記述があります。

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(「バタビア臨時軍法会議の記録」)


「部下の軍人や民間人が上記女性らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどしたような戦争犯罪行為」と書かれているのですから、当然それは安倍の言うところの「狭義の強制連行」を直接述べているような資料と言えます。

河野談話当時の新聞も、一応は言及しています。
例えば、河野談話を伝える1993年8月15日の日本経済新聞は、こう書いています。

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ここで日経は、「旧陸軍の軍法会議で・・・有期刑を受けた記録が見られる」と書いていますが、これは誤報です。

刑罰を言い渡したのは、戦後の連合軍によるバタビア法廷であり、「旧陸軍の軍法会議」ではありません。


右派論壇では、1996年ころから、20年間に渡って、河野談話攻撃がなされてきました。しかしこのバタビア臨時軍法会議の記録」について述べたものは、当会が調べた範囲内では発見できませんでした。資料についてもっともコメントしている秦郁彦慰安婦と戦場の性』にも、言及がありませんから、「まったく無視されている」と述べても過言ではありません。

ところが、この「旧陸軍の軍法会議で・・・有期刑を受けた記録が見られる」という誤報は、スマラン事件の解説として右派に受け継がれているらしく、今日でもネトウヨがデマを飛ばすことがあります。


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        (ネトウヨデマ例)




そこで、2013年6月10日。共産党の赤嶺議員が質問書(質問第一〇二号)を提出し、問いただしました。


四 この〔法務省関係〕(バタビア臨時軍法会議の記録)は、1「ジャワ島セラマン所在の慰安所関係事件」について、「判決事実の概要」を記しているが、そこには、「ジャワ島セラマンほかの抑留所に収容中であったオランダ人女性らを慰安婦として使う計画の立案と実現に協力したものであるが、慰安所開設後(一九四四年二月末ころ)、「一九四四年二月末ころから同年四月までの間、部下の軍人や民間人が上記女性らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどしたような戦争犯罪行為を知り又は知り得たにもかかわらずこれを黙認した」などの記述がある。間違いないか。


この問いに対して、安倍政権は「三及び四について
 内閣官房内閣外政審議室が平成五年八月四日に発表した「いわゆる従軍慰安婦問題の調査結果について」において、御指摘のような記述がされている。」と答えています。http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b183102.htm

赤嶺議員は次にこう聞いています。
五 この「判決事実の概要」には、「一九四四年二月末ころから同年四月までの間、部下の軍人や民間人が上記女性らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどしたような戦争犯罪行為を知り又は知り得たにもかかわらずこれを黙認した」との記述がある。「上記女性」とは、「ジャワ島セラマンほかの抑留所に収容中であったオランダ人女性」である。これらの記述は、「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述」にあたらないのか。

これに対して安倍政権は、
「五及び六について
 政府の認識は、答弁書一の1から3までについてでお答えしたものと同じである。」と答えています。http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b183102.htm

答弁書一の1から3までについてでお答え」というのは、これです。

一の1から3までについて

 お尋ねは、「強制性」の定義に関連するものであるが、慰安婦問題については、政府において、平成三年十二月から平成五年八月まで関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の内閣官房長官談話(以下「官房長官談話」という。)のとおりとなったものである。また、同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。

 この赤嶺議員の質問自体がこの答弁書に関するものだったのだが、安倍政権は「軍人や民間人が上記女性らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要する」と書かれていても、それは軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」
と言い張ったわけだ。