まず、1965年の日韓協定について、日本政府は1993年までは「個人の請求権は存在する」と明言していたのである。
これについて簡単に説明しよう。
まず
「 …条約上、国が放棄をしても個々人がソ連政府に対して請求する権利はある、こういうふうに考えられますが、…本人または遺族の人が個々に賃金を請求する権利はある、こういうことでいいですか?」
こういういう質問である。これに対して高島有終外務大臣官房審議官は「ある」と答えた。
「私ども繰り返し申し上げております点は、日ソ共同宣言第六項におきます請求権の放棄という点は、国家自身の請求権及び国家が自動的に持っておると考えられております外交保護権の放棄ということでございます。したがいまして、御指摘のように我が国国民個人からソ連またはその国民に対する請求権までも放棄したものではないというふうに考えております。」
つまり、日ソ共同宣言で請求権の放棄を謳っているが、それは「外交保護権の放棄ということ」であり、「個人からソ連またはその国民に対する請求権」は残っているというのだ。
これがいわば、前フリであり、そこからこうなる。
これまで請求権は解決済みとされてまいりましたが、今後も民間の請求権は一切認めない方針を貫くおつもりでございますか?
この質問に対してまず、当時アジア局長であった谷野作太郎がこう答える。
政府と政府との間におきましてはこの問題は決着済みという立場でございます。
ただいまアジア局長から御答弁申し上げたことに尽きると思いますけれども、あえて私の方から若干補足させていただきますと、先生御承知のとおり、いわゆる日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます。(1991年8月27日 参議院予算委員会)
その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます。
つまり、 「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」 と日本政府は答えたのである。
例えば韓国政府が韓国の国民の請求権につきまして政府として我が国政府に問題を持ち出すということはできない、こういうことでございます。
ただ、個人の請求権が国内法的な意味で消滅していないということも仰せのとおりでございます。
と答えている。
「個人の請求権が国内法的な意味で消滅していない」と明言している。そこで、名乗り出た韓国の人達は、日本国に賠償を求める裁判を起こしたのである。
ところが・・・だ。
裁判を起こすと同時に、日本政府はなんと、「個人の請求権も消滅している」と主張を変えたのである。
詳しい事はすでにここで記事にしている。
要するに日本政府はそれまでのゴールポストをずらしたのである。
いやゴールポストだけではない。
ルールそのものを自分の都合のいいように変更してしまったのだ。
そのため、裁判は全敗となってしまったのである。
我が国の事ながら
本当に卑劣である。
それが事実というものだ。
実に、「慰安婦」問題が迷宮入りした原因はここにあると言わねばならないであろう。
なんですかね、これは? ↓
韓国外務省が合意内容を説明、元慰安婦は猛反発
TBS系(JNN) 12月29日(火)18時39分配信
28日に日本と韓国の間で最終合意した慰安婦問題。29日、韓国外務省の次官が元慰安婦に合意内容の説明に行きましたが、激しい反発を受けました。日本の外交官たちは韓国側のこれまでのやり方を「動くゴールポスト」と呼んできました。日本が問題解決を目指して動くと、韓国はゴールを遠くに動かして不十分だと言い出すという批判です。果たして今回は大丈夫なのでしょうか。「こんにちは」(韓国外務省・イム・ソンナム次官)
「あんた誰よ。何様なの」(元慰安婦)
元慰安婦が共同生活を送る施設を訪れた韓国外務省のイム・ソンナム第1次官。日韓で決着した合意内容について了解を得ようとしますが・・・
「会談より前に被害者に会うべきでしょう。年寄りで分からないと思って無視するの?」(元慰安婦)
「そんなことありません」(イム・ソンナム次官)
イム次官が、半ば強引に元慰安婦の手をとって座らせますが、怒りは収まりません。
「韓国外務省は何てことするんだ!」(元慰安婦)
「心からおわびと反省の気持ちを表明します」(岸田文雄外相〔12月28日〕)
最も力を入れた「安倍総理の謝罪」や「日本政府の責任」といった言葉を引き出した韓国政府。引き換えに、「国内世論の調整」という難しい課題も背負いました。
実は韓国政府は、会談前から露骨な世論対策に乗り出していたのです。会談の数時間前、韓国メディアの論説委員を集め、外交機密であったはずの合意内容を漏らし、政府の「言い分」を説明。さらに、韓国外務省の関係者は会談後、メディアに対しある「お願い」もしていました。
「日韓の先鋭化した立場の違いという現実的な制約があったが、全ての外交資産を動員した努力のたまものと評価してほしい」(韓国外務省関係者)
こうした影響もあるのでしょうか。29日の朝刊で大手紙は、日本側から「責任を痛感しているとの表現を引き出した」と、概ね肯定的な見出しで報じました。しかし・・・
「政府間での合意は認めません。改めて合意し直してください」(元慰安婦)
韓国政府は、当事者の元慰安婦から厳しく外交姿勢を問われる事態となっています。
「(Q.総理からねぎらうような言葉は?)ふふふ・・・はい!『ご苦労さまでした』という言葉はいただきました」(岸田文雄外相)
29日、安倍総理を訪ねた岸田外務大臣の表情は、大役を終えた安堵感からかにこやかでした。今回の合意をめぐり、日本政府が最もこだわったのがこの「言葉」です。
「この問題(慰安婦問題)が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」(韓国・尹炳世外相〔12月28日〕)
「不可逆的」、つまり、慰安婦問題を蒸し返さないという言葉に日本政府の関係者は・・・
「今までは韓国は自分からこのフレーズを言ったことはなかった。でも今回はテレビの前で話して世界が目撃者になったわけだ」(政府関係者A)
「国際社会が目撃した合意を破ることはないだろう」。こう期待する政府関係者に、別の政府関係者は・・・
「今後、慰安婦の支援団体が騒いでこちらに言われても困る。あとはもう朴槿恵大統領のリーダーシップの問題だよ」(政府関係者B)
あくまで「韓国の国内問題」と突き放します。朴槿恵(パク・クネ)大統領がどこまで指導力を発揮できるのか、日本政府はその手腕を注視しています。(29日16:34)
最終更新:12月29日(火)22時18分