秦郁彦の歪な3派分類の仕方
勘違いしないで欲しいのだが、私は秦郁彦をある程度は認めている。例えば『陰謀史観』という本があるが、これはなかなかいい本だった。これからあげる『現代史の争点』という本も渡部昇一や中村 粲(あきら)とのやりとりは、勉強になる。
ただ1点、慰安婦に関する部分がおかしいのである。
秤(はかり)が狂っているとしか言いようがない。
例えばP49、50に慰安婦問題に「3派ある」と書いている。
3派とは?
①必要悪派
元軍人など売買春が合法だった戦前期を知る男女世代が中心。
兵士たちは彼女らの収入の数十分の1の給料で命をかけて戦い、多くは戦死したり餓死したりのひどい目に会いましたが、慰安してもらった感謝の気持ちを忘れていません。敗戦で彼女たちが稼いだ軍票収入が紙くずになってしまったのを気の毒に思っています。老後に困っているなら相応に見舞金を出したいと考えているのです。
これ自体が秦の想像する人物像でウソ満載だが、続きを見てみよう。
②フェミニズム派
(略)
③反体制派
この派は政府や体制派を困らせる話題なら何でも利用する立場ですから・・・
(略)
この3派だそうだ。
「あれ?」と思った人もいるだろう。
それは、必要悪派の責任でも、フェミニズム派の責任でも、反体制派の責任でもない。
まず第一の責任は「慰安婦制度を造った」日本軍と政府にある。
そしてその事実を認めようとせず、妄言を繰り返した日本の右翼議員の責任である。
要するに永野は国際問題にしてしまったのだ。
さてその永野発言の前に自民党は
そういう勉強会でお勉強したから、上の永野のような発言になったのだ。
秦郁彦は明らかに、この巨大勢力については書きたくないようですね。そういう重要な事をまったく書かないのは、書かない理由があるのだろう、と私は推測する。
だから慰安婦問題における彼の著作は歪なものになってしまっているのだ。